Facebookなどの海外SNS勢がmixiと大きく違った点は、「実名制」を導入していたことだった。
mixiではサービス開始当初より「ニックネーム制」を採用していた。匿名性が保たれる点は日本人の国民性にもマッチしていたとみられ、好意的に受け取られていたという。
だが、SNSとしての価値を高めるには「このユーザーが“本人”である」という確認が取れ、社会的信用の高いサービスを提供できることが重要。Facebookなどが日本に上陸する前から、もっと言えば誕生する前から「mixiもニックネーム制から実名制への転換に踏み切るべきだ」と議論していたことを木村社長は明かした。
「ですが、日本では『ネットで実名を晒すやつなんているのか』という意見が一般的でした。社内でも『日本では実名制は受け入れられないだろう』『クレームが出る』といった声が挙がり、なかなか実名制へ移行できずにいました。既存ユーザーに忖度(そんたく)しているうちに実名制を導入しているFacebookが日本にやってきて負けてしまったと考えています」
開発能力にもmixiとFacebookでは大きな差があったという。日本よりもITサービスの発展に力を入れていた米国では、市場から投資資金をより集めやすい環境だったのではないかと木村社長は言う。必然的に開発に割けるリソースに差が付き、それがサービスのクオリティにも反映した結果だった。
また、このような外圧のほかに、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへの転換に遅れてしまったこともミクシィにとって大きな痛手となった。
当時のミクシィの収益の大部分はフィーチャーフォンやPC上の広告収入、ソーシャルネットワークアプリケーションのプラットフォーム手数料だったため、まだまだ発展途上であるスマートフォンへのシフトに躊躇(ちゅうちょ)してしまったのだ。
新たな技術革新に対応するのではなく、既存サービスの向上に注力してしまう、いわゆる“イノベーションのジレンマ”に陥っていたと木村社長は振り返った。
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