GAFAと国家が個人データを巡り激突する時代 国民にその自覚はあるか小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)

» 2019年03月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]
GAFAに対する規制が日本でも本格的に検討され始めた(写真提供:ゲッティイメージズ) GAFAに対する規制が日本でも本格的に検討され始めた(写真提供:ゲッティイメージズ)

 日本でも、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの総称)をはじめとしたデジタル・プラットフォーマーへの規制が本格的に検討され始めている。

 例えば、2月18日に「日経×TECH」は以下のように報じている。

 経済産業省や公正取引委員会、総務省合同の有識者会合「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」は2月18日、GAFAなどプラットフォーマーに対する規制について6月までに取りまとめて、政府の成長戦略に盛り込む方針を公表した。

 2018年6月、閣議決定された「未来投資戦略2018」においてプラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備を進めると発表していたが、これが具体化するということだ(下図)

デジタル・プラットフォーマー ルール整備の基本原則(出典:経済産業省、公正取引委員会、総務省) デジタル・プラットフォーマー ルール整備の基本原則(出典:経済産業省、公正取引委員会、総務省)

 並行して、「公正取引委員会が電子商取引(EC)モールを運営する企業の一斉調査に乗り出している。独占禁止法が禁じた『優越的地位の乱用』にあたる取引をしていないか判断するのが狙いだという。ネット通販は生活に欠かせない分野に成長したが、商品を供給する中小企業の間では、運営企業から『不利な取引を強いられている』という声が出ていた」(日本経済新聞 19年2月27日)という動きもある。

 これはアマゾンが5月下旬から全商品を対象に購入価格の1%をポイント還元するにあたり、還元の原資を出品者負担とする内容を出品者宛に通知したことが発端となっている。

 「出品者に直接的な利益があることを明示せずにポイント還元の規約を変更すると、取引先に不当に不利益を与えるとして独禁法が禁じた『優越的地位の乱用』に抵触する可能性がある」(同記事)ということを問題視し、調査に踏み切ったというものだが、これもデジタル・プラットフォーマー規制に向けた調査の一環である。デジタル・プラットフォーマーの独り勝ちに対する規制が、本格的に検討されている。

 デジタル・プラットフォーマーが提供するさまざまなサービスは原則無料であるため、消費者に不利益は与えていないとして、これまではその活動は規制される対象とはなってこなかった。単なる新しい広告メディアのように捉えられてきた面もあったが、タダと引き換えに収集されている膨大なデータを使った独占的な情報インフラが構築されつつあることが問題視されるようになってきている。

 無料で提供される便利なサービスは、社会インフラ化してしまっているため、消費者はその存在に依存して生活するようになっており、今や嫌でも自分だけ離脱することは難しい。しかし、デジタル・プラットフォーマーは資本主義の下の私企業であり、当然、独占した情報を使って排他的に自らの利益を極大化しようとする。アマゾンの論理の前に出品企業が抵抗できないような状況は、これからあらゆる場面で出てくるはずだ。

 これまでの資本主義社会においても、健全で公正な競争を担保するための競争法(日本でいえば独占禁止法)というルールが存在する。ここまで大きな存在となったデジタル・プラットフォーマーが、消費者の利益を著しく損なうことがないよう一定の規制を受けるのはある意味で当然といえよう。

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