GAFAと国家が個人データを巡り激突する時代 国民にその自覚はあるか小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)

» 2019年03月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]

マイナンバーカードの起死回生策

 デジタル・プラットフォーマー規制が準備される一方で、ほぼ同じ時期に、政府によるデジタルデータ収集のためのID、マイナンバーに関するニュースもあった。

 21年3月から原則すべての病院で、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにすることが閣議決定された。制度開始から3年を経ても1割程度しか普及の進まないマイナンバーカードであるが、健康保険証として代用できるようにすれば、カードを取得する人が増えると期待している、とのこと。

 マイナンバーカードの普及が進まないのは、IDカードとしては免許証やパスポートがあれば事足りるのに、他に大したメリットがないカードを作る人はあまりいなかったということに尽きる。健康保険証の機能を持たせることでどこまでカード発行者の割合を上げられるかは分からないが、公共関連サービスがすべてマイナンバーで本人確認をするようになる時期はそう遠くないかもしれない。

 そうなれば、公共サービスにおける利便性も向上するだろうが、マイナンバーカードは発行必須のものとされることだろう。今回の健康保険証との機能統合は、政府のマイナンバーを軸としたデータ収集に向けた準備が、着々と進んでいるのを感じられる動きだ。その主たる目的は、税務調査能力の向上と効率性の改善であり、財政再建待ったなしの我が国における税収確保の切り札でもある。

 消費税引上げに際しての景気対策に何だか不自然な施策が混ざっているのも、この背景で考えてみると腑に落ちる。キャッシュレス決済に対しての5%ポイント還元というのも、批判の多い経済対策だが、これにマイナンバーカードに対するポイント加算というのが検討されているらしい。キャッシュレス化、とマイナンバーという組み合せは、まさにデータとIDであり、これにより個人の経済活動をデータで追跡可能にしたいのだ、という真の狙いを示している。

 デジタル環境が整ってきた今、財政再建待ったなしの政府にとって、経済活動のデジタル記録を残させる環境整備は、かなり重要な関心事なのだろう。その理由が、経済活動の大半がデジタル記録が残るようになれば、税務調査などが飛躍的にやりやすくなるからということは言うまでもない。

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