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“会社員”が消える日――「雇用激減時代」の未来地図自分の仕事は自分で守れ(2/5 ページ)

» 2019年03月28日 11時52分 公開
[大内伸哉ITmedia]

孫正義「ロボットを24時間動かせば人間の3倍働く」

 技術革新が、ビジネスモデルを変えたり、人間の業務を奪ったりするのは、銀行だけの話ではない。多くの産業にいま起きているのは、あらゆるモノやコトに関する情報をデジタルデータ(数字)に置き換え、コンピュータで処理可能なものとする「デジタライゼーション」だ。とくにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の発達やセンサーの精度の向上により、大量のデジタルデータ(ビッグデータ)が収集され、それをAIが分析し、そこから、これまでとはまったく違うビジネスモデルが構築されようとしているのだ。

 新たなビジネスは、国境のないネット社会のなかで、グローバルに展開し世界を席巻する。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)など、私たちの現在の生活になじみのある企業は、デジタル技術を駆使して短期間で躍進した。産業界に広がりつつあるこうした動きは「第4次産業革命」と呼ぶにふさわしいものだ(この言葉は、11年頃からドイツ政府が推進し始めた「Industrie 4.0」に由来する)。

 ただ、産業革命というと気になるのは雇用への影響だ。18世紀後半に起きた「第1次産業革命」は繊維産業の職人の仕事を奪ったために、「ラッダイト運動(機械打ち壊し運動)」が起きた。「第4次産業革命」にも、同じようなことが起こる懸念はある。実際、すでにデジタルデータとAIやロボットの融合により、多くの人間の定型的な業務が奪われるという分析結果が公表されている。

 オックスフォード大学の研究者が、13年に米国の雇用の約47%がデジタル化により危険にさらされているという報告書を発表し(ただし、コンサルティング会社のマッキンゼーの報告書では、3割以上の業務内容が自動化される職業は約60%として数字はやや控え目になっている)、15年12月に野村総合研究所が、日本の労働人口の49%がAIやロボットなどで代替可能になるとプレスリリースしたことから、マスメディアは「AIは敵か味方か?」というテーマをこぞって取り上げてきた。

 もっとも、AIやロボットの活用には、労働力不足への対処という面があることも看過してはならない。現在の日本社会の抱える最も深刻な問題の一つは、労働力不足だ。国立社会保障・人口問題研究所が17年7月に発表した推計結果(出生中位・死亡中位)によると、15歳から64歳の生産年齢人口は、15年時点で約7728万人だが、これが2065年には約4529万人にまで減少する。つまり今後約50年間で4割以上の労働力人口の減少が予想されているのだ。

 政府は、これに備えるため、「ニッポン一億総活躍プラン」を打ち出すなど、女性、高齢者、外国人などの活用に躍起となっている。しかし、人口減少基調のなかで女性や高齢者の活用といっても限界があるし、外国人については移民問題があり、海外で生じている深刻な問題(とくに欧米での移民排斥の動き)をみるとそう安易に進めることはできない(政府は、18年に外国人材の受け入れを広げる法改正を、野党の反対を押しのけて強引に成立させたが、問題は山積で前途多難だ)。

 むしろソフトバンクの孫正義会長が語ったとされる、「3000万台のロボットを導入して24時間動かせば、人間の3倍働くので9000万人相当になる」という言葉のほうが示唆的だ。ロボットやAIは、その活用による雇用減をおそれるよりも、人手不足対策として積極的に活用したほうがよいのではないか、ということだ。

phot GAFAは従来のビジネスモデルを破壊し世界を席捲している(グーグル本社、写真提供:ゲッティイメージズ)

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