土肥: 「焼きたてのパンを再現できるようなトースター」を目指すことになったということですが、もう少し詳しく教えてください。
八百幸: パンをトーストすると、表面に色が付いて、食感はサクサクしますよね。それがおいしいという人もいるのですが、その一方で「パンの耳(クラスト層)がかたくなるので、その部分は食べない」「焼き過ぎてしまうことがあって、焦げたところは食べない」といった声がありました。こうした不満があるので、「トースターを使わずに食べる」「一斤のパンを買って、そのまま切って食べる」という人もいました。
焼きたてのパンとトーストしたパンは、どのような違いがあるのか。当社で調べたところ、4つの違いがあることが分かってきました。トーストすると、5〜8%の水分が抜けて、耳のふんわり感が大きく低下して、香りは半分以下になって、弾力・張りは87%になって。従来のトースターに不満を感じている人が多いのであれば、パンの中に含まれている水分を逃がさずに、耳もふんわり感を出して、もちもちした食感を再現すればいいのかもしれない。こうしたトースターをつくることができないかということで、炊飯器を開発しているメンバーにも参加してもらうことに。
土肥: ん? なぜそこで炊飯器を担当している人がメンバーに加わるのですか?
八百幸: 一般的なトースターは加熱すると、隙間から水分が蒸発して、パン本来の香りとうまみ成分を失ってしまう。ということであれば、パンを「密封」すればいいのではないかと考えたんですよね。当社の炊飯器は、本体と内釜の隙間をなくしていて、熱を逃がさずに加熱することができる。この技術を応用できるのではないかと考えました。
そんなこんなで、トースター開発のプロジェクトリーダーには、炊飯器を担当している人になってもらいました。ただ、ひとつ問題がありました。リーダーは朝食に何を食べているのか聞いたところ、白いお米だったんですよね。パンを食べていない(苦笑)。
土肥: 畑違いの人が着任したわけですね。その後、どうなったのですか?
八百幸: プロトタイプをつくりました。金属の箱があって、そこにパンを入れて、鍋のフタのようなモノで閉める。フタにはパッキンが付いていて、本体内を密封させる構造になっていました。あと、従来のトースターで使われている、ガラス管のヒーターではなく、面で焼くことができるヒーターを導入しました。
ガラス管のヒーターはコストが安いので使い勝手はいいのですが、一部分だけ非常に熱くなるので、焼きむらができやすい。ということで、フライパンのようにパンを均一に焼き上げ、密封させることで水分を逃がさない構造にしました。
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