クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

完敗としか言いようがない日産の決算池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2019年05月20日 07時05分 公開
[池田直渡ITmedia]

失敗の分析

 販売奨励金という、誰もが熟知しているバナナの皮をわざわざ踏みにいくようなことがなぜ何度も起きるのかは外野から見ていると不思議で仕方ない。世界中の自動車メーカーが分かっていながら懲りずに踏んで派手に転ぶ。死屍累々(ししるいるい)のその陥穽(かんせい)に頻繁に落ちて地獄を見る会社があるのが現実だ。

 泣きっ面に蜂という言葉があるが、ここしばらくの重点戦略となっていた新興国投資も一向にリターンを産まない。生産能力を持て余しており、無駄なランニングコストになっている。これはリストラしないと新たな投資資金が欠乏してしまう。ということで日産の現状はかなり厳しい。

 実のところこの新興国投資も長期的には惨敗の遠因になっている。新興国に積極投資をする資金をひねり出すために、グローバルで新車の発売ペースを落としたのだ。日本ほど酷くないまでもそういうプライオリティの錯誤はグローバルでも行われてきた。そうやってデビューから年数を経た古いクルマをショールームに並べていれば、値引きをして売らなくてはならなくなる。

平均車齢は5年を超えなかなか新車種が登場しない。リテールの市場シェアも7.7%に下降(日産決算資料より)

 国内で先行して起こった製品発売サイクルの異常に対して、筆者は4年前に警鐘を鳴らしたが(15年6月の記事参照)、それをさらに世界に拡大し続けてしまった結果が今回の決算だ。

 ものすごく分かりやすくいえば、古くて商品に魅力がない → 値引き → ブランド価値の毀損 → さらなる値引き → それでも売れない → 大口顧客に押し込む → 利益が激減という流れである。

 つまり、最も重要なのは「値引きをしなくても売れる魅力あるクルマを作る」ことだ。もうからないラーメン屋が「やっぱり美味いラーメンを作らないとダメだ」と気づくようなもので、ちょっとあまりにも初歩的でアホくさいが、そこまで戻らないとダメなところまでいったのが今回の決算である。それにしても不思議なのは途中で気がつかないものなのだろうか? ということだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.