クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

完敗としか言いようがない日産の決算池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2019年05月20日 07時05分 公開
[池田直渡ITmedia]

 正直なところ、ここまでの数字だと分析して何がしかの対策が見いだせるものでもない。多分あらゆる項目がダメだと考えられるのだが、それでは解説にならないので一応やってみる。まずは販売台数がどこで落ち込んだのかだ。

  • 日本は58万4000台から59万6000台(プラス1万2000台 2.1%増)
  • 北米は159万3000台から144万4000台(マイナス14万9000台 9.3%減)
  • 中国は152万台から156万4000台(プラス4万4000台 2.9%増)
  • 欧州は75万6000台から64万3000台(マイナス11万3000台 14.9%減)
各地域の販売台数(日産決算資料より編集部作成)

 明らかに北米と欧州の落ち込みがひどい。一見プラスに見える日本だが、日産はもう長らく国内向けに新車をほとんど出していない。かつて国内販売でトヨタと覇を競っていたところから、長い年数をかけて凋落(ちょうらく)して来た末にあるのが今の数字だ。59万6000台に増えたといっても、かつてのライバルトヨタは国内販売222万6000台。しかもその虎の子の59万6000台に占める軽自動車の比率が高いので、一台当たり利益も小さいというていたらくだ。

次年度のリカバリープランはあるのか?

 で、出てしまった結果は仕方がないとしても、この不振を今後どうするつもりなのかと次年度の販売台数見通しを見てみる。

販売台数見通し(日産決算資料より)

 日本でのプラス2.3%はグローバルへの影響としてはもう誤差でしかないし、おそらく日産自身もそれでグローバル販売台数をどうこうできるとは考えていないだろう。

 今期決算に大きな痛手となった北米と欧州は、次年度も続落の見込み。唯一中国マーケットは次年度の成長が見込める見通しになっているが、中国の特殊ルールで縛られる中国法人は半分が現地資本であり、日産が持ち分比率で利益計上できるのは半分程度になってしまう。

 ちなみに、中国での販売台数では、日産はトヨタに勝っている。トヨタの148万7000台に対して、156万4000台。ただこれも喜んでばかりはいられない。トヨタは技術流出を案じる日本政府から中国進出を自重するように呼びかけられた経緯があり、以来対中国マーケット用にいろいろな用心をして、準備を整えてから本格的に進出しているからだ。本腰を入れてからは2年くらいでしかない。先行する中国の覇者フォルクスワーゲンに至ってはすでに300万台。日産の中国での成績は、確かにほかの各地での厳しさに比べれば福音だが、さりとて利益面でも成長速度でも順風満帆とはいえない勝ちである。

 という見通しに鑑みれば、北米と欧州での立て直しが長期化すれば、立て直し策が間に合っていないと見るしかないだろう。

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