投資初心者にとって、なぜ仮想通貨が初めての投資先になってしまうのか。金融庁が考える投資は、中長期的な目線で資産を増やしていくことだ。その点で見ると、値動きが激しく、価値の裏付けもない仮想通貨は、投資というよりもギャンブルに近いともいえる。
ビットコインが直近の2カ月で41万円から90万円まで暴騰したように、値動きの激しさを魅力と感じている利用者も多いだろう。いくつかの取引所が提供している差金決済では、レバレッジ取引によって入金額の10倍もの取引さえ可能になっている。
ただし、投資初心者が仮想通貨に目を向ける理由はそれだけではない。他の投資先に比べて、圧倒的に少額から購入できる点が、資産額に乏しい若者にとって魅力となっている。大手取引所のCoincheckでは、すべての仮想通貨を500円から購入できる。GMOコインなら、ビットコインは86円から購入が可能だ。
LINEがスタートした「ワンコイン投資」では、最低投資額を月額約2000円まで抑えた。ターゲットとなる若年層が最も気にしているのが、投資金額だからだ。「ユーザーから要望が多かったのが、金銭的なハードルを下げてほしいということ。投資額を下げるべきだということで(積み立て最低額を)500円にした」(LINE)
一方で、上場企業の株式を購入しようと思ったら、まとまった資金が必要になる。東証は、望ましい投資単位の水準として5万〜50万円を挙げており、そのために取引単位の100株への移行を進めてきた。
ただし「値がさ株」と呼ばれる企業の株式は、100株単位でも高額で、気軽に投資できる価格帯ではない。ユニクロのファーストリテイリングの最低売買代金は、なんと650万円にも上る。そのほかにも任天堂(380万円)、JR東海(220万円)、ソフトバンクグループ(100万円)など、単価の高い著名企業は数多い。
冒頭に挙げたN高投資部でも、生徒から「(投資の実践教育用に支給される)20万円では取引できる株式が限られる」という質問が出ていた。証券会社によっては、100株単位ではなく1株単位での売買ができる仕組みを用意していたり、100円から投資信託を購入できたりする。しかし、若年層には仮想通貨のほうが気軽に購入できる投資対象と見られているようだ。
「貯蓄から投資へ」といわれる背景は、株式や債券などに長期に渡って投資することで、自助努力で老後に向けた資産を築くことだ。ところが、短期的な上下に一喜一憂する仮想通貨が、若者の投資の入り口になっているのは皮肉なことでもある。
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