とはいえ、会議の終わりに発言するのは、ちょっとハードルが高い。若手は特に。そんなときは、手を上げてこう言えばいい。
「私の理解が合っているか確認させてもらいたいんですが……。今日決まったことは、これとこれで、やるべきことはこれ、という認識で合っていますか?」
これくらいなら、会議の末席に座っている若手だって発言できるはずだ。「決まったことがあやふやですよね?」や「何も決まってないじゃないですか」といった上から目線はダメだ。とにかく主催者のプライドを傷つけないように。少し“おばかなふり”をして確認するくらいでちょうどいい。あとは度胸の問題。これで「黙ってろ!」と上司に怒られるようなら、その会社は辞めた方がいい。
「決まったこと」の裏には、「決まっていないこと」や「次回の会議で決めること」もあるはずだ。これも合わせて確認すると、抜け漏れがなくなる。むしろ決まっていないことの方が重要なこともあるだろう。「決まったことはこれ、決まっていないことはこれ」と確認しよう。
やるべきことが決まっていても、この2つが決まっていることはまれだ。しかし、これが不明確だとやるべきことは実行されない。「誰がいつまでにやるか?」を必ず確認しよう。
ちょっと実例を見てみよう。とあるプロジェクトでのこと。そろそろ会議も終わろうかというタイミングでこんなことが起こった。私の隣には最若手のメンバーTさん(26歳)が座っており、彼は熱心にメモを取っていた。
私:(Tさんのノートをちらっとのぞき込んで、小声で)あれ? 決まったことメモしているんですね
T:(小声で)ええ、ちょっと自信ない部分もあるんですけど……。一応自分用のメモとして
私:ほほう。じゃあ思い切って、“決まったこと”を確認しちゃいましょうよ。自信がない部分もあるんでしょ?
T:ええ? この場で?! 無理ですよ……
私:大丈夫、大丈夫。あ、皆さんすみません。だいぶいろんな議論をしてきたので、最後にTさんから決まったことを確認してもらいたいんですが、いいでしょうか?
他の参加者:おー? いいよ。T、確認してみな
T:すみません……。じゃあ確認させてください。決まったことはxxと△△。保留になっているのは□□、だと思うんですが。合ってますか?
他の参加者の反応はというと、
うん。合ってるよ
え? △△は決まってないでしょ? 継続議論って理解だったけど?
何言ってんだよ、さっき話してたじゃないか
ちょっと待ってよ、そもそも、今日決まったことを誰がやるか、決めてないじゃないか
――この後しばらく全員で“決まったこと”を再確認し、会議は終了した。全員が出て行った会議室でTさんは、頭をかきながら言った。
T:結局、私の理解で合ってましたね。ほっとしました。でも、榊巻さんヒドイですよ
私:ふふふ。それにしてもモメましたね。確認してよかったです
T:確かにそうですね。度胸はいるけど、毎回確認した方がいいんでしょうね
私:ですね。さすが期待のエース! 次回も確認お願いしますね
面白いことに、こんなことはしょっちゅう起こる。
だまされたと思って、試しに5つ程度の会議で、決まったこととやるべきことを確認してみてほしい。経験上、半分くらいは確認したときにモメるだろう。
それだけ人の理解はあやふやなものだし、そもそも“決まりきっていないこと”も多いのだ。2時間の会議の最後にたった30秒確認するだけで、認識のズレが解消できるなら安いものだろう。
これだけのことではあるが、実行しようと思うと、けっこう度胸がいる。でもやった方が絶対によいのは、誰が見ても明らかだ。こうした積み重ねが確実に会議の質を変えていくのである。逆に言うと、この程度が徹底できないなら、他に何をやってもダメだ。
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
議論に集中できない、参加者が内職や居眠りをしている――。そんな“ダメ会議”からどうすれば脱却できるのか。会議の生産性を高めるポイントを、榊巻亮さんの著書『世界で一番やさしい会議の教科書』と『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』から紹介します。
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