テスラが自動車業界に与えたインパクトは大きい。立派な功績である。と筆者が書くと意外に思う人は多いだろうが、実はその点はずっと前から認めているのだ。
日本に2台しかないModel 3の試乗車(筆者撮影)
自社の優れた点をアピールするのは一向に構わないが、その度に既存の自動車産業をおとしめること、そしてその批判がフェアでないこと、そのやり方のはしたなさについて筆者は指摘してきたに過ぎない。考え方が違うのは構わないが、事実認識の解釈が自社に都合良すぎる。テスラには、そんな言動が目立っている。
例えばModel Xの発表会で、テスラの日本法人社長は、「内燃機関による大気汚染は呼吸器疾患を引き起こして毎年何万人もの人を死においやってきた。テスラはゼロエミッションだ」と発言した。
これには猛烈に腹が立った。まずテスラのゼロエミッションはあくまでも走行時に限った話であって、全体をみると、発電には大量の化石燃料が使われている事実を無視している。その意味において、内燃機関の排気管から出ていた汚染物質がEVでは発電所に付け替えられているに過ぎない。
テスラ車両によって削減されたCO2排出量を、テスラはWebページでアピールしている
次にその都合の良い解釈をベースに「ゼロエミッションだからエネルギーを気ままに使っていい」という考え方も問題だ。「Model Xは、停止状態から3秒で時速100キロメートルに達する」。そう自慢げに言うが、先の説明を引き写せば、その加速をまかなう発電所は何万人もの呼吸器疾患被害の上に成り立っているのではないか? それとも内燃機関原因の呼吸器疾患と発電所由来の呼吸器疾患を区別する方法があるのだろうか?
本当にサステイナブルな社会を模索するのであれば、そこまでの加速は必要ない。エネルギーの無駄は慎むべきではないか? そういう論理構築の不誠実や他企業へのフェアでない批判は、テスラの存在意義の説明に本当に必要なものなのだろうか。
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