さて、ここでテスラは正念場を迎える。これまでのモデルはどれもプレミアムEVである。高価ゆえに台数が限られる。そもそもテスラは「安いことにとらわれる必要はない」という発想で新たなEVの可能性を切り開いたのだが、そのままでは小規模メーカーから脱却できない。
次のステージに入るには、大胆な価格低減を実現するしかない。そしてそれはそれまでのテスラの原点である「プレミアムEV」からの脱却を意味していた。
Model 3はその発表時に3万5000ドル(約390万円)を目指した。そのために近づくだけでドアハンドルが浮き出るギミックなどを省略した。もちろんそれだけではそんな価格は実現できない。各部に価格低減の要素を大幅に盛り込んでいる。
ひとつ例を挙げよう。まずはインテリアを見てほしい。通常メーターやスイッチが並ぶダッシュボードには、Model 3では1つもスイッチが付かない。メーターはセンター部の液晶画面に集約され、限りなく全てのスイッチがタッチパネル操作になっている。
Model 3の内装は極めてシンプル。センターに15インチサイズの液晶画面がタブレットのように配置され、存在感を主張している。写真では見えにくいが、ハザードスイッチはルームミラーの付け根あたりの天井に設けられている(筆者撮影)このデザインには明らかに意味がある。まずはこの液晶に全てを集約する方法であれば、ソフトウェア設定だけ変えれば、右ハンドルと左ハンドルのどちらにも対応できる。ハードウェアはステアリングのみを移設すれば良い。それらの部品の削減と共用化はコストに効いてくる。
さらに、ダッシュボードからスイッチを排除すれば、配線組み付けコストを大幅に削減できる。液晶はおそらくコネクター1個で済んでしまうだろう。ロボット組み立てを考えるならば、こういう単純な構造は望ましい。
この写真のルームミラーの手前、天井にハザードランプのスイッチが取り付けられている。Aピラーにはスピーカーがマウントされている。ミラー付近にはどうしても室内灯の電源を引いて来なくてはならない。その配線はピラーを通る。
つまりハザードスイッチもスピーカーも、絶対に配線を通さざるを得ない場所に移動させたのだ。それはコストダウンを徹底するためだ。このスッキリした内装は他のクルマと圧倒的に違う差別化ポイントになるだけでなく、コスト的にも有利になる。
こういう部分を見ても、Model 3が従来のテスラの常識を覆す価格を実現するために知恵と工夫が凝らされていることがわかるだろう。全てはEVの価格破壊を実現するためだ。
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