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パッと見ただけで年収が分かる時代が来る?――DMM亀山会長らが見通す未来AI時代の人間は「ガンダム」や「聖闘士星矢」のようになる(3/6 ページ)

» 2019年06月12日 05時00分 公開
GLOBIS知見録

A日本人の強みを生かすヒントは「お茶」にあり

仲暁子氏(以下、敬称略): 話題を変えていいですか?ちょっと「お茶」の話をさせてください。最近『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮社)という本がすごく売れているじゃないですか。故・樹木希林さんが出演して映画化もされて。あの本がすごいんです。日本人のエッセンスみたいなものがすごくよく書かれている。結局、AIとかビッグデータとかロボットといっても最後は物量の戦いになりますよね。でも、日本は規制があって賃金も上げづらいし、そうなると人材の量や質でも勝てないので、構造的に勝てないという話になっちゃう。そういうときに日本人の何を生かすのかという話に興味があって、そこでお茶の話がすごく面白いと思ったんです。

 個人的には、お茶について3つの大きな発見がありました。1つ目が、「自己発見」的学習。お茶にはたくさんの作法があるらしいんですね。「手をこう動かして、次はこう動かして」みたいな。ただ、その1つひとつについて「なぜこうするんですか?」と聞いても「理由なんてなんでもいい。やりなさい」となる。欧米だと、理由を聞けば「いい質問だ。スマートだね」という風になるのに対して、古き良き日本は「質問なんてしては駄目。とにかくやるんだ」みたいな。最終的に、ある時「分かる」んですね。

 「知る」と「分かる」はよく違うといいますが、経験を通じて「分かる」に直接飛ぶ感じです。良いとか悪いとかいう意味ではなくて、とにかくそういうところがある。日本人が形から入るのが好きなのも、ここに起因すると思います。

phot 日本人の強みを生かすためのヒントが「お茶」から学べる(写真提供:ゲッティイメージズ)

 2つ目は他者との比較をせず、自己との比較をする点です。欧米だと「山田くんに勝った」「田中さんに勝った」といった比較になるんですが、日本のお茶では他者でなく、過去の自分と比べてどう極めていくかが大切になるんですね。だから、例えば80歳になっても勉強が楽しいなんていう話がある。お茶をすることは「勉強する」と言うそうですが、それで80歳になってもお茶を続けるし、どんどん自分を極めていく。それは職人のエッセンスでもあると思います。日本人特有のオーバースペック問題にもつながるという意味ではビジネス的にはマイナスもあるけれど、それがアートではプラスに働いたりするわけですね。

 そして3つ目は、細かい作法が求められるお茶のような世界で神経を研ぎ澄ませていると、感性がすごく豊かになること。身体中のセンサーが強化されるともいえます。それで、例えば茶室に侘(わ)び寂びを感じて、寂れてはいるけれども一方では小さな茶室から小宇宙を感じたりする。そういう妄想力も日本人が培ってきたエッセンスなんだと思いました。

 あるいは舞い落ちる桜の花びらを見て、欧米の人々は「花びらが落ちているだけじゃん」となるけれども、そこに何かを感じたりするという。そういう妄想力は、漫画などのコンテンツに通じると思います。商売としては非論理的で生産性を下げたりする価値観でもあると思いますが、とにかく『日日是好日』では、そういう、今までもやもや感じていたものがかなり言語化されていて「なるほど」って思いました。

phot 舞い落ちる桜の花びらを見て何を感じるか?(写真提供:ゲッティイメージズ)

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