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やたら手が掛かる上に高価、なのに売れまくり――人に懐く「LOVOT」はなぜ、約88億円もの資金調達に成功したのか未知なるものを生み出す組織(3/3 ページ)

» 2019年06月12日 08時00分 公開
[宮本恵理子ITmedia]
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 「かわいさ」に注目されることが多かった日本と比較して、アメリカでは「メンタルヘルス」「ストレスケア」の文脈で取り上げられることが目立ったのも印象的でした。実際、デンマークの老人ホームでは、「入居以来、一言もほかの入居者と会話していなかった高齢男性が、LOVOTと接することで隣の人と会話を始めた」という事例も報告されていますし、既に認知症の改善に関する共同研究のオファーも複数いただいています。

 このショーでは、ロボットだけでも各国の340社から出品されていたのですが、メジャーな企業を抑えて「BEST ROBOT」に選ばれたことで、「真にユニークな製品は、PRバリューが非常に高いのだな」と実感しましたね。

「かつてないもの」を生み出すための組織づくりとは

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―― 世界も注目する斬新なものづくりを達成するための組織づくりについて、林さんが実践してきたこととは?

林: やりながら学んでいく“ラーニング・アジリティ”、学習の俊敏性を高められる環境を常に意識しています。これまで前例がないロボットを作ろうとする時、仕様は最初から全部決まっているわけではなく、手探りです。結局、イノベーションとは、「作り始めの段階では、ゴールがぼんやりとしか見えない」からこそイノベーションになるのです。

 ものづくりのスピードを加速するのに不可欠となるのが、組織の“横串のコミュニケーションコスト”を下げること。AI屋さんが素材屋さんと話したり、デザイナーがソフトウェア屋さんと話したりといったコミュニケーションをしやすい環境をつくると、いわゆる「スクラム型開発」が形成され、開発の進化が早まります。組織の形でいうと、横串の交流がしやすい「フラット型」が適しています。

 一方で、「ピラミッド型」の組織はトップダウンの指示系統が働くので、“縦串のコミュニケーションコスト”が下がります。初期段階から仕様が確定していて、その通りに開発を進める「ウオーターフォール型開発」に向いています。過去の経験を役立たせる大量生産型のものづくりには、最適の形だったといえるでしょう。

 しかし、われわれが挑んでいるのは、1年後どころか2週間後の答えも見えない世界です。理論的に考えても、開発の初期段階というのは「最も知識がない時期」であり、初期計画に基づいて開発を進めることは失敗確率を高めることにしかならない。ならば、最終段階の計画に基づいて開発できればいいのですが、「計画を最後に立てる」のは現実として無理な話ですよね。ですから、「2週間分だけ計画を立て、2週間後にはまた計画をイチから見直す」という方法をとっています。

 世界最速で開発する2週間を積み上げていけば、1年後も世界最速たり得る――。そんなイメージを持ちながら、日々、LOVOTに命を吹き込んでいるんです。

LOVOTに会えるイベント開催!

Photo イベントの申し込みはLOVOTの画像をクリック!

7月9日(火)、ITmedia ビジネスオンライン編集部とGROOVE X、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ共催のイベントを開催します。テーマは「かつてないロボットのためのサービスとシステムができるまで」。

「LOVOT」のサービスインが間近に迫った今、最終的な提供サービスはどのような形になり、その裏で動くシステムはどのような仕組みになったのか。そこに至るまでのプロセスはどのようなものだったのか――。LOVOTを支える「かけはしプロジェクト」メンバーの座談会を通じて、サービス提供に至るまでのストーリーを紹介します。

人事、総務、IT部門の方、企業変革、組織変革に関心がある方、ぜひお誘い合わせの上、遊びに来てください。LOVOT体験コーナーもご用意します。

イベントの申し込みはこちらから


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