クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2019年06月12日 07時05分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」プラス:トヨタの電動化ゲームチェンジ (2/4)

[池田直渡,ITmedia]

バッテリー供給問題を剛腕で解決したトヨタ

 しかし今回の発表で、この550万台達成を5年前倒して2025年とするとアナウンスしたのだ。「そら見たことか!」と言いたい人にはまたもや残念ながら、前倒しの原動力は予想を超えるHVの加速で、これまでトヨタが繰り返してきた通り、30年までの主力はHVという見通しがさらに補強された格好だ。

電動車普及ペースは当初の想定を上回るペース。5年ほど先行している(トヨタ資料より)

 実際、欧州をはじめ、いくつかのメーカーが華々しくEVを先行開発してきたが、その頼みの綱のEVの販売が振るわず、メーカーごとの「全販売実績の平均CO2排出量」で規制する20年のCAFE規制(企業平均燃費規制)をクリアできるめどが立たず、トヨタにHVを供給してくれというケースが増えているとトヨタは言う。

 その結果が先日のトヨタによるHV特許の無償提供だ。HVを欲しがるメーカーはエンジンごとトヨタのシステムを受け入れるわけにもいかず、自社のエンジンとトヨタ・ハイブリッド・システム(THS)を組み合わせた動力源を望む。しかしそれは大きな工数を要する開発となる上、膨大なノウハウが必要だ。THSだけ渡して「あとはご自分で」では成立しない。そのためにトヨタは他社エンジンとTHSを適合させる部署を立ち上げ、システムサプライヤー機能を持つ覚悟を固めた。

 しかしながら、そもそも自社だけでも5年前倒しに売れている上に、他社に供給する分も必要になったという流れでいうと、これまでも散々調達に苦しんできたバッテリーの確保がさらに大変になる。

 ハイブリッド特許の無償提供に際し、トヨタはバッテリーを除外しているが、調達能力の無い会社にHVのシステムを供給しても「バッテリーはご自由に」では、ビジネスが成立するわけがない。これは筆者の見立てだが、バッテリー供給については、ある程度の面倒は見ざるを得ないはずだ。

 加えて世界で一番台数を売る中国マーケットでは「EV以外はナンバー交付2年待ち」という極端なEV優遇策が施行されており、政府は非公式に「わが国でEVを売るなら中国製のバッテリーを採用すること」というアンフェアなルールを強要している。

世界のEV市場は税制優遇や補助金に支えられて拡大。過半を中国市場が占める(トヨタ資料より)

 ここ数年中国での拡販を目指し始めたトヨタは、すでに提携を発表しているパナソニックのバッテリーだけでは、総量的にも、中国の俺様ルール的にも対応しきれない。

 そこでトヨタは、従来からパイプを築いてきたパナソニックに加え、中国のバッテリーメーカー、BYDおよびCATLとも提携した。これは恐ろしい話で、トヨタはバッテリー生産量でトップ3のメーカー全部と提携したことになる。

 世界の自動車メーカーがこぞって欲しがるのがバッテリーという状況を考えると、大人げないと言えばこれ以上大人げない話もない。

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