クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

スープラ ミドルスポーツの矛盾構造池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2019年06月17日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]

トヨタの主張

 正方形に近づけるやり方は2つある。トレッドを広げるか、ホイールベースを削るか。トレッドを広げればクルマは巨大になって、俊敏さが活かせなくなる。となればホイールベースを削るしかない。例え狭くてもリヤシートを付けたらディメンジョンが1.7前後になることは避けられない。だからさまざまな反対を押し切って2座にした。それはピュアスポーツであるためである。

 しかも2020年代に向けてリリースするスポーツカーだ。環境問題を考慮したハイブリッドモデルを設定しなくていいのか? という要求も当然出てくるだろう。チーフエンジニアはそれも拒絶した。駆動用のバッテリーを搭載しようと思えばそれだけ重く大きくなる。どうしてもパッケージが緩くなるし、ハイブリッドと非ハイブリッドの重量配分が大きく変わり、さらにハイブリッドモデルの重量配分は悪化する。

 車内の荷物置き場が制限される2座で、パワートレインはコンベンショナルなエンジンのみ。削りに削って将来拡張性をかなり諦めてまでこういうクルマを作ったのは、すべてピュアなスポーツであるためだ。それがトヨタの言い分である。

 分からないではない。しかしどうしても引っかかるのは、ピュアスポーツという言葉の定義だ。筆者がピュアスポーツといわれて頭に浮かぶのは、ロータス・エリーゼやスーパーセブン。ラディカルやアリエル・アトム、KTMクロスボウなどのレーシングカーとスポーツカーの汽水域に生息するクルマたちだ。このグループに新型スープラを入れるのはさすがに違和感があり過ぎる。

ロータス・エリーゼ(奥)とゼノスE10。どちらも英国ならではのピュアスポーツ

 とはいえ、少量生産メーカーゆえにいろいろな規制対応を免除されているピュアスポーツのジャンルには、トヨタのクルマが入っていかれないのは分かる。課せられるルールが異なるので同じものは作れない。

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