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ピアプレッシャーという“病巣”――「休暇制度の充実」だけでは働き方改革を実現できない「無制限の有休」は奏功しなかった(4/5 ページ)

» 2019年06月18日 07時45分 公開
[生駒一将ITmedia]
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「ブランクを作らない」サポートも両立支援の1つ

 16年にゲンナイ製薬が公開した「育休・産休に関する実態調査」によると、産休・育休の申請をためらったと回答した女性が挙げた理由の上位2つに「職場の人に迷惑が掛かると思ったから」「復帰後、ブランクを埋めるのが大変そうだと思ったから」が挙がった。休暇制度で生まれたブランクに対する不安が並んでいる。

 また、実際に休暇制度を取得した社員が答えた「産休・育休中に不安だったこと 」という項目においても、上位3つの回答に、子育てと仕事の両立や同じ業務内容・待遇での復帰、休暇前と同じ業務量をこなせるかという不安が挙がった。

 育休や産休といった休暇制度は、働く社員自らが親としての役割をしっかりと果たすためには最適な制度だ。しかし、一方で「1ワーカーとしての自分」やキャリア形成を考える上では、まだまだ不安を生む要因になっている。仕事と育児を両立する女性が昇進・昇格のコースから離れる「マミートラック」も女性の懸念材料の1つである現在、企業が休暇制度だけを充実させていくことは、必ずしも正解とは言い切れない。

 実際にアウトドア製品ブランドとして有名なPatagonia(パタゴニア)は、30年以上も前から本社オフィスで保育施設を設け、業績が厳しいときも撤廃することなく存続させてきた。その背景には、「企業は働く家族のために、支援がしっかりとした環境を提供すべきだ」という創業者イヴォン・シュイナード氏の意志がある。社員が家庭とオフィスでそれぞれ活躍する「働く親」と考えたときに、産休・育休制度に加え、保育施設も単に「あれば良いもの(Nice-to-have)ではなかった」という。

 「ブランクを作らない」ことは社員のワークとライフの「ワーク」を支える上で、重要な要素なのだ。

photo パタゴニアのオフィス(以下Patagonia社のWebサイトより)
photo 質の高い保育施設のあり方や働く家族に対して社内託児所を提供することの大切さを説いた書籍『Family Business: Innovative On-Site Child Care Since 1983

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