コラム
» 2019年06月18日 07時45分 公開

「無制限の有休」は奏功しなかった:ピアプレッシャーという“病巣”――「休暇制度の充実」だけでは働き方改革を実現できない (2/5)

[生駒一将,ITmedia]

「社員が利用しやすい福利厚生」とは

 冒頭の「無期限の有休制度」に話を戻すと、この休暇制度は仕事と私生活の両立に自由度を与えると期待された画期的な制度だった。しかし蓋(ふた)を開けてみると、期待していたほどに利用されず、社員に十分な価値も提供できなかった。「休暇を取ること」が誰にとっても簡単ではなく、ひいては社員の個人的な事情によっては必要とされていないことが明らかとなったのだ。

 それでは、産休や育休のように目的が明確な休暇制度はどうだろうか? 最近では日本でも産休や育休を充実させる企業を多く目にするようになったものの、休暇制度を利用しにくい雰囲気があるために「利用しなかった」と答える人はかなりの割合で存在している。

「育休・産休を取りにくい」と感じる人たちは3割以上

 厚生労働省の「平成29年度雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は5.14%だった。過去10年で少しずつ右肩上がりの数字を見せつつも、政府目標である「20年における取得率13%」には、まだ程遠い状態だ。内閣府男女共同参画局の広報誌『共同参画』では「男性の育児休業取得促進に取り組む企業等を支援する必要」があると述べられている。

photo 男性の育休取得率は増えているものの、政府目標(2020年における取得率13%)には程遠い(厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査」より)

 そして同誌に掲載されている三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査において「3歳未満の子どもを持つ20〜40歳代の男性正社員のうち、育休を利用したかったが利用できなかった人の割合は3割にものぼり、実際の育児休業取得率5.14%との乖離(かいり)が生じて」いるとの報告もされている。その理由には、「繁忙な業務による職場の人手不足(27.8%)」「育児休業を取得しづらい雰囲気(25.4%)」の2つが「育休制度が整備されていなかった」に次いで挙がった。

 女性側も似たような結果となった。女性の育休取得率は17年で83.2%と、ここ数年の減少傾向に左右されながらも、10年間で80%以上の取得率を保っている。しかし、女性が育休を利用しなかった理由の1位に「取得しづらい雰囲気(37%)」が挙がっていた。産休・育休が整備されていても、結局のところそれを利用しにくいと感じる社員が多くいる現実が浮かび上がる。

 先日筆者は友人の女性と食事に行ったのだが、彼女の同僚や先輩が産休・育休を利用してそのまま退職する機会があり、そのことへのちょっとした不満を聞くことがあった。これまで男性の友人が愚痴をこぼすシーンには何度か立ち会ったことがあるが、女性側からも否定的な意見が出ていることを知り、産休・育休制度だけでは働きながら子育てを行う環境づくりに、まだまだ壁があると改めて感じた。

photo 産休・育休については女性の同僚や後輩からも否定的な意見が出ている(写真提供:ゲッティイメージズ)

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