メルカリが電子決済の覇権を握る日小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)

» 2019年06月26日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

シェアを取れば収益は後からついてくる

 フリマアプリ最大手といえばメルカリであり、その総取扱高は19年には5000億円超(リサイクルショップ最大手は、ゲオホールディングスで1066億円/19年)となる勢いで成長しているものの、決算としては赤字が続いている。その要因は、費用の3割以上を広告宣伝費につぎ込み、ダウンロード数、利用者数、アクティブユーザー数の拡大に努めていること、また人材への先行投資、だと会社は説明している。彼らが収益よりも、消費者への浸透を優先している理由は、中古品流通における圧倒的なシェアを確立し、スタンダードになることが重要だからである。

 「取引所」型のビジネスモデルなので、損益分岐点を超えた時点で、あとは売り上げに比例して儲(もう)けが増えていく計算だ。シェアさえ取れば、収益は後からついてくるのである。しかし、メルカリが業界最大手となっても、さらに圧倒的なシェアを目指すのには訳がある。彼らの目指す未来は、中古品流通業界の覇者などという小さなものではないからだ。

電子決済システムで存在感増すメルペイ

 中古品流通の圧倒的なシェアを持つことは、19年2月からスタートした電子決済システム、メルペイの行方にも大きな影響を及ぼす。競争が激化している電子決済手段のなかでもメルペイは、中古品販売代金という唯一独自のチャージ手段を持っている。メルカリで売れた代金はメルペイの中にプールされ、(1)メルカリで購入するのに使うか、(2)メルペイで支払うことに充てるか、(3)銀行に振り込むか、を選べる。(1)が最も望ましいが、メルカリ外で使われる際はメルペイで使ってもらうようにすれば、メルペイが他の決済手段より使う理由のあるツールになるはずだ。

 メルペイには、あと払いというかなり画期的な機能もついた。メルカリでの購入代金の支払いや、加盟店での支払いを、翌月にまとめてあと払いできるというもので、購入時にお金がなくても買うことができ、翌月の売上代金を貯(た)めて支払いに充ててください、というものだ。この機能があれば、アプリ内での売買をより誘い込むことができるため、メルペイの中で動くお金も自然に増えることになる。

 当然、あと払いは立て替えであるため、貸し倒れのリスクはあるが、数万円の小口上限設定を取引実績に応じて会社が決めていて、翌月その分を売れば資金は入ってくるため、通常の与信よりもリスクはかなり小さい。メルペイはこうした便利な機能も併せ持っていることで、他の決済手段との差別化をアピールできるだろう。

phot スマホ決済サービス「メルペイ」がリリース

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