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「24時間からの撤退」を突き付けられたコンビニ本部の“生存戦略”小売・流通アナリストの視点(1/6 ページ)

» 2019年04月26日 07時15分 公開
[中井彰人ITmedia]

 このところ、コンビニエンスストアの24時間営業の是非を発端に、コンビニ本部と加盟店との関係がクローズアップされている。人手不足の深刻化と人件費の高騰で、深夜営業の従業員確保が難しくなったセブン-イレブン(以下、セブン)の加盟店が、独自判断で営業時間を短縮したことに対して、セブン本部がペナルティーや契約解除の方針を示した。

 これにコンビニオーナーと一般的に呼ばれる加盟店側が反発、一部加盟店で構成する「コンビニ加盟店ユニオン」が時短営業などを求めてセブンに対して団体交渉に応じるよう要求した。東京都や岡山県の労働委員会は、加盟店と本部の間に事実上の労働関係があるとしてコンビニ本部に団体交渉に応じるよう命じたが、中労委ではこの判断を覆し、フランチャイズ(以下、FC)契約に基づくコンビニの本部と加盟店は独立した事業者であり、労働者には当たらないという認識を示した。

phot コンビニ本部とオーナーの対立が続いている(写真提供:ゲッティイメージズ)

セブンが異例の「態度軟化」

 マスコミに大きく取り上げられたこの議論は、コンビニの24時間営業は必要なのか、という波紋を呼んだ。結果として消費者の意見は、必ずしもコンビニが24時間営業していなくても問題はない、という声が大勢を占めていたことで、コンビニ本部の24時間営業死守の姿勢に対して批判が集まることになった。こうした中で、発端となったセブン本部も、時短営業に関する実験を行うとし、また時短営業に踏み切った加盟店に対しても強硬な制裁措置は行わないと態度を軟化させた。4月には混乱の責任を取るとして、セブン経営陣の更迭という事態にまで至ったことはご存じの経緯だ。

 こうした状況に、経済産業省はコンビニ各社に対して人手不足を是正する計画づくりを「要請」した。重要な社会インフラであるコンビニの経営安定が必要、と判断したとのことだが、FC契約に基づくコンビニ本部と加盟店の紛争に関しては、既存の法律では対処しづらいため、根拠法のない「任意の要請」という異例の措置となったのだという。

 FC契約とは、日本フランチャイズ協会によれば、「事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、及び経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」と定義されている。 

 ざっくり言えば、コンビニ本部のようなビジネスモデルの提供者と、そのビジネスモデルの賛同者である加盟店が、パートナーとして、共に当該ビジネスを発展させていくという仕組みであり、法的には対等のパートナーであるという前提がある。このため、労働法や下請法といった法的規制の対象ではなく、行政も対応がしづらいようだ(下図)。

phot フランチャイズチェーンの仕組み(日本フランチャイズ協会のWebサイトより)
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