コンビニ本部はこうした環境変化に関して手をこまねいていた訳ではなく、現場の省人化に向けた無人レジ、無人店舗などの実験を行って、技術革新によって対策を講じようとはしてきている。ただ、こうしたテクノロジーの導入も一朝一夕に進むわけではなく、その間も現場の苦悩は続いている。
今、コンビニ本部がやるべきは、本部社員の目標設定を、本部の収益や出店数などから、担当する加盟店の合計収益という項目に変えることではないだろうか。本部と加盟店の収益は長期的には密接な関係にあり、本部収益の追求が最終的には加盟店の利益につながるというのが、かつての本部の論理だろうが、これからは逆に加盟店起点の発想が不可欠だ。
しかし、いまや巨大企業となったコンビニ本部のサラリーマン社員に本部計数の目標を示せば、その達成のためには加盟店の犠牲に目をつぶってでも、自らの目標達成を優先するのは目に見えている。加盟店収益まで含めた目標管理に方向転換しなければ、「加盟店との対話」など絵に描いた餅になることは間違いない。
労働力不足という環境変化は、競合企業などとは比較にならない脅威となることは明らかだ。この矢面に立たされる加盟店という運命共同体を支えられない企業に明るい未来はない。これから迎える決算説明会、株主総会などで示されるコンビニ各社の施策にこの視点があるか否かで、加盟店問題への取り組みの本気度が見えてくる。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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