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「24時間からの撤退」を突き付けられたコンビニ本部の“生存戦略”小売・流通アナリストの視点(5/6 ページ)

» 2019年04月26日 07時15分 公開
[中井彰人ITmedia]

致命的だった「本部の認識不足」

 コンビニ本部は、今回の件に関しては、ヒトの面での対応に失敗し、加盟店の不信感をフォローできなかった面が大きい。24時間というビジネスモデルを守ることを優先し、そのビジネスモデルで最も重要であるはずの加盟店との協調がおろそかになった。また、コンビニの競争環境が、これまでとは違うステージに入ったとの認識も不足していた。

 本部は、これまでも手厚い加盟店支援で全体利益の拡大を実現してきたという意識があり、本部主導の施策が加盟店の大多数の利益につながると考えた。しかし、現場における人手不足の深刻化は本部の想像を超えていたことに加え、コンビニという業界における競争環境が全く以前とは違うという認識が不足していた。いまや、全国に5万店が普及し、企業の淘汰も進んだため、一部地域を除きセブン、ファミマ、ローソンのほぼ3社間での戦いとなった。昔のような個人商店や弱小チェーンを相手に、商圏を奪えるような時代は完全に終わっている。

 セブン優位とは言われているが、大手小売、大手商社の威信を掛けた競争であり、そう簡単に決着がつくものではない。競争を優先して出店の密度を上げているため、同一チェーン内でのカニバリ(共食い)も激化している。尖兵として最前線で戦っている各コンビニの加盟店の疲弊は相当なものだろう。

 4月に入って、セブンの沖縄進出日程が決定、これによりセブンの全都道府県進出が完了というニュースがリリースされていた。一方、同日に、ファミマの時短営業実験を地域単位で、大規模実施し、参加店舗数は約270店舗になるとのニュースも重なった。コンビニ3社の国内への出店が最終段階を迎え、国内マーケットの飽和を前提とした戦略の切り替えが待ったなしであることを再認識する日となった。セブンの新体制が打ち出した施策は、出店数の削減と既存店の強化だという。

 小売店であるからスクラップ&ビルドは続けていかなければならないが、これからの国内コンビニ市場は、出店数の拡大は収益拡大と直結しない、ということを意識した方向に変わっていかざるを得ない。当たり前のことだが、加盟店の収益確保を実現できないコンビニ本部が、本部だけ収益を得られるというような仕組みが持続できる訳はない(そんなチェーンがあれば、競合が加盟店に誘いかけて、大量に看板替えさせてしまうはず)。

phot 国内マーケットの飽和を前提としたコンビニ3社の「戦略切り替え」は待ったなしだ(写真提供:ゲッティイメージズ)

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