「○○ペイ競争」は激化していて、高額なキャンペーン資金を投下した登録者獲得競争が繰り広げられているが、キャンペーン後のリピーターは思うように獲得できていないという。どの○○ペイを選ぶかといった場合に、そこまでの差別化ができる訳でもないのであろう。だが、メルペイには他の決済手段にはない武器がある。「メルカリ取引」での売上代金という消費者にとっての新たな収入だ。
給与所得者が大半を占める一般消費者にとって、普通は毎月の給与以外には収入はない。しかし、メルカリは中古品売買を身近なものとしたことによって、一般の消費者に給与以外の副収入を得る手段を提供した。この新たな資金の流れを握ることで、メルペイは他の決済手段にはない画期的なチャージ方法を消費者に提供したといえるのだ。
メルカリのアクティブユーザーだとしたら、常に売上代金がメルペイに入ってくるため、それを使うためにメルペイを主要な決済手段に選ぶ可能性は高い。そうした背景を考えれば、メルカリが中古品流通におけるユーザー開拓に遮二無二なって突き進む理由は自明ということになろう。では、なぜ、メルカリはメルペイによって、激戦の電子決済競争に参戦しようとしているのか。これは他の電子決済事業者と同じく、利用者の決済情報をビッグデータとして蓄積するためだ。
今後、急速にキャッシュレス化が進むことが予想されているが、それは消費者の購買行動の全てが何らかのデジタルデータとして記録されていくことを意味している。こうしたデジタルデータを大量に貯めてビッグデータとして、マーケティングに活用していくことが、今後の消費者ビジネスには欠かせない。電子マネーやQR決済などの電子決済手段が、これまで日本で主流だった現金決済からの受け皿となるだろう。そうなれば現金決済からのシフトを取り込んだ電子決済手段が、日本における消費者購買データの覇者となる。
今はSuicaなどの交通系電子マネーやnanaco、WAONなどの流通系電子マネーが決済データの主要プレイヤーだが、現金からのシフトを多く取り込めば(増大していくキャッシュレス化の需要をうまく取り込めば)、最終的にはシェアは大きく変動する可能性もある。消費者購買データの覇権の行方がまだ分からない状況下で、メルカリは覇権争いに名乗りを上げた。それは必ずしも無謀な挑戦ではなく、中古品売買という消費者の新たな入金手段をテコに電子決済のメインプレイヤーとなるという理にかなったチャレンジなのである。
中古品売買という消費者購買関連データについても、実態的にはマーケットを寡占しているメルカリしか持ちえない状況となりつつある。中古品取引+消費者購買データの大手となるようなデータ量を収集できたとすれば、メルカリの野望は現実となる可能性もあるのだ。
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