会議を開くときは当然「誰を呼ぶか」を考えるが、普段どんな観点で参加者を選んでいるだろうか。もしかして「あの人、念のため呼んでおいた方がいいな」というようなアサインの仕方をしていないだろうか? これでは参加者は増える一方だ。
参加者を「(A)いないと困る人」「(B)(どちらでもいいが)いた方がいい人」「(C)いない方がいい人」の3つに分けて考えてみよう。
多くの会議では(A)と(B)を呼ぶケースが多いだろう。「あの話になるかもしれないし、念のためあいつも呼んでおくか……」というのは、(B)にあたる。
しかし、本質的に会議に必要なのは(A)だけのはずである。「(B)がいても困らないから、呼んでおけばいいじゃないか」と思うかもしれないが、それは違う。
会議に関心が薄い(B)の人たちは、発言せず、内職する確率が高くなる。そうなると会議にマイナスの影響が及ぶのだ。少人数で意見が活発に出る会議と、大人数で一部の人だけが発言している会議を思い浮かべてみると、違いが分かるだろう。
また、(B)の人たちは、会議に呼ばれても決して「楽しい有意義な時間だった」とは思わず、むしろ「つまらない会議に参加している」と感じるのではないだろうか。だから、極力(A)の人たちだけで会議をした方がいい。
参加者を選定する時のコツは「この人がいなかったら何が起こるだろうか?」と考えることだ。会議の終了条件を達成する上で、マズイことが起こるなら(A)、何も起こらなそうなら(B)に属する人になる。
言い方を変えると「終了条件にたどり着くために、呼ばないと困る人だけを呼ぶ」ということだ。これができれば、ぐっと会議の人数が絞られ、密度の高い議論がしやすくなる。
3つ目のPは会議の「進め方」だ。「進め方って、議題(アジェンダ)でしょ? それなら考えているよ」という方もいるだろう。素晴らしい。……だが浅い!
議題はあくまで「何を」議論するかである。もう一段階深く「どうやって」議論するかまで考えておかないと、シミュレーションにはならない。
例えば「想定課題を洗い出す」というアジェンダだけでも、議論のやり方はたくさんある。
――といったように、1つの議題でも進め方は無数に出てくる。いわば会議の「シナリオ」だ。会議の終了条件にどんな風にたどり着くのか、どんな順番で何を議論すればいいのか、どんな風に議論するのか、などを考える必要がある。
仮に、会議のゴールが「紙の電子化施策に関するリスクが洗い出され、対策案が出た状態を作る」ことだったとする。これを受けてアジェンダとシナリオをブレークダウンすると、こんな風になる。
ここまでやって、ようやく会議の進め方を考えたことになる。とはいえ、落としどころを決めて、予定調和な会議にしろと言っているわけではない。あくまで準備なので、現場で進め方を変えることもあるが、それでいいのだ。準備がきっちりできていれば、不測の事態にも対応しやすくなる。
最後のPは「装備」だ。会議の装備というと、会議室や資料といったハードばかりが注目され、情報や人などのソフトは見過ごされがちだ。結論を出すために必要な情報がそろっていないのに議論を始めると、会議がグズグズになってしまうことが多い。大事な装備として、しっかりと準備しておきたい。
実は、会議のシナリオまで想定していると、議論に必要なものは随分見えてくる。例えば「課題を洗い出すのに、現在の業務自体が分かっていないともめるだろうなぁ。事前に調べておこう」「意志決定するには他社の状況が分かっていないとつらいだろうな。事前にまとめておくか」――といったように、シナリオを見ていると自然と必要なものが分かってくるのだ。
だから、4つのPは目的→人→進め方→装備の順でなければならない。目的が決まると、目的を達成するために必要な人が決まり、その人たちとゴールを達成するためのプロセスが決まる。そして、プロセスが決まって初めて、必要な装備が見えてくる。
いきなり装備から考えようとしても「会議室を取る」くらいしかできないのが分かるだろうか。4つのPは全てつながっていて、全部考えてはじめて「準備した」と言えるのだ。
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
議論に集中できない、参加者が内職や居眠りをしている――。そんな“ダメ会議”からどうすれば脱却できるのか。会議の生産性を高めるポイントを、榊巻亮さんの著書『世界で一番やさしい会議の教科書』と『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』から紹介します。
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