クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

Mazda3国内仕様試乗で判明した「ちょっと待った!」池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2019年07月01日 07時04分 公開
[池田直渡ITmedia]

1.8Dはエンジンが落第

 ただし、SKYACTIV-D1.8は別だ。おそらく試乗をして気に入った人は「おっ! 発進からトルクがあるな」と感じたのだと思う。だがそれは錯覚だ。静止状態からのアクセルの踏み込みに対してエンジンのレスポンスが悪いので、ドライバーは無意識に「あれもう少しかな?」とアクセルを踏み足し、その結果レスポンスが付いてくる頃には、踏み過ぎている。

1.8リットルディーゼルエンジン「SKYACTIV-D1.8」

 だから低速から大トルクがあるように誤認する。信号待ちの先頭で青になった時のように、野放図に加速力を決められるシーンならば「トルクがあるな」でいいが、公道を走っている限り、加・加速度(単位時間あたりの加速度の増加量)はたいてい先行車などの外的要因で決まる。そんな時ドライバーが周辺状況によって決めた加・加速度を勝手に上回る機械は優秀とはいえない。

 しかも、このおかしさの理由をクルマの挙動から分析して原因にたどり着ける人はそう多くないと思う。ほとんどの人は「力があるから気をつけなくちゃ」と思うだけだ。

 余計に開けているからトルクが大きいのは当たり前だが、エンジンは、何時いかなる時にもドライバーが望む量のトルクを忠実に発揮してみせることが本懐である。だったら、適正な踏み込み量をドライバーが判断できるような感覚フィードバックであるべきだ。それができていない。

 その結果「ヤバい魔物がエンジンルームに棲んで(すんで)いるようなストレス」を感じる。あるいは「財布に50万円くらい入っている時のような落ち着かなさ」といってもいいかもしれない。自分が御するのが大変な、しかも正体がよく分からないものを管理し続けなければならないのは存外負担に感じるものだ。

 今度は第7世代の白眉ともいえるブレーキを例に取ろう。Mazda3のブレーキは、初めて乗った人のひと踏み目には、全然効かないように感じる。しかしそれはサーボ(倍力装置)が過剰介入して、ドライバーの操作以上にブレーキを効かせてしまう従来のクルマに慣れてしまっているからで、踏力と効き具合の関係性を一度理解すれば、踏む時も緩める時も、意のままに減速力を増減できる素晴らしいブレーキである。ペダルの遊びを過ぎた瞬間に、意図せず高い減速が起きることにおびえて操作しなくていい、ストレスフリーの理想的操作系である。

 勘の良い読者ならすでにお気づきの通り、SKYACTIV-D 1.8のアクセルは、第7世代のブレーキが否定したオーバーサーボのブレーキと一緒で、そんなに加速したくない時に意図以上に加速を始めてしまう。それは全く人間中心ではない。

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