救いは、ディーゼルの本領である高速巡航では何の問題もなく、むしろ優秀であること。ただ操作負荷全体における発進停止はかなり頻度が高いので、これを免罪符にできるかといわれると厳しい。
もちろん低排気量ディーゼルが技術的に大変なのは分かる。ひとつ上の2.2ディーゼルは基礎排気量が多い上に、小型ターボと可変ジオメトリーターボのツインターボ構成になっている。この可変ジオメトリーターボとは、タービンに排気ガスが当たる角度をフラップ状の羽で制御してやる仕組みで、弱い排ガスでもタービンを回せ、強くなっても行き過ぎないように調整できる魔法のターボだ。ただししょせんは魔法なのでハマった時はすごいが、ちょっと条件が変わると、あれ? ということも起きる。そこは本物の大排気量ユニットには敵わない。
だから魔法の効きが悪い低速用に小型ターボを追加している。魔法が本当に万能なら、年次改良で2.2Dに可変ジオメトリーターボを採用した時に、小型ターボはお引き取り願っているはずだ。基本的にターボとはあっちもこっちも痛い人が一生懸命膏薬(こうやく)を貼ってなんとかするような技術で、対症療法そのものだ。
一歩下がって見れば、そもそも吸排気系というのは疎密波(波)を最適化する技術なので、どうやっても容積と長さで基本特性は決まってしまう。そのスイートスポットを広げるのは、エスカレーターを反対に登っていくような労力の大きい技術開発である。
さて話を戻す。ターボでも絶対的な排気量が大きければ、踏み始めから排気ガスの量が多い。加えてワンステージ目の小型ターボが、少ない排気ガスで効率良く過給してくれるので、問題が起きにくく、起きても軽傷だ。多分SKYACTIV-D 2.2はマツダの歴史に残る名エンジンになるだろう。
だったら何で2.2Dの設定を止めたのかという声は聞くが、あれはアクセラ/Mazda3にはオーバーサイズで、あの時は2.2しかなかったから仕方なく搭載しただけだ。
さて、2.2と同じことを低排気量、低予算でやろうとした1.8は残念ながらだいぶ違う。本当なら排気量が小さいほど、低速用のターボはより重要なのに、予算の都合でターボは魔法のヤツ1つだけ。元々1.5だったこのエンジンを、マツダが1.8にキャパシティアップした理由はよく分かる。
ということで、マツダがサボっているわけでも手を抜いているわけでもないのだが、1.8ディーゼルは所与の条件が厳しく、いろいろ思うようになっていない。しかしそれはメーカーの都合であって、ユーザーには関係ない。筆者はユーザーの側に立つ義務があるので、1.8ディーゼルの現状には合格点は上げられない。
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