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“周りに教えを乞えなくなった”オジサンたちの末路会社のお荷物にならないために(3/3 ページ)

» 2019年07月11日 08時00分 公開
[安達裕哉ITmedia]
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「失敗」を利用できる人生と、できない人生では、能力向上に大きく差が出る。

 2010年、ミシガン州立大学の心理学者、ジェイソン・モーザーは、実験を行った。この実験では、ボランティアの被験者に脳波測定用の電極がついたヘッドキャップをかぶってもらい、被験者が失敗したときにどのような変化が脳内で起こるかを観察した。すると、面白いことが分かった。

 「能力は向上しない」と信じている固定型マインドセットの被験者たちは、回答の間違いを無視した。ところが、「能力は向上する」と信じている成長型マインドセットの被験者たちは、間違いへの反応が強く、失敗後の正答率が上昇した。

 「失敗への着目度と、学習効果」には、密接な相関がある。失敗から学べない人は、失敗を受け止めず、失敗の理由を知性や自分の能力にする。ところが、学習能力の高い人は、失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないものとして自然に受け止める。

book 『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』ディスカヴァー・トゥエンティワン刊 マシュー・サイド著

 ところが、「できること」「うまくやれること」だけをやっていると、この勘が鈍ってくる。「失敗しないが普通」ではダメなのだ。だから私は「Twitter」や「釣り」「筋トレ」など、新しいことを定期的に始めるようにしている。私の周りの人々も、トライアスロンや、フットサル、小説やイラスト、パン焼きからVRゲームまで、さまざまなことに手を出している。

 特に、釣りのような、ある程度投資が必要で、右も左も分からないことをする経験は、「失敗せよ」が強制的にやってくる。釣り船のオッサンから「そこ邪魔!」と言われることで、私は失敗を意識せざるを得ない心境になるし、魚が釣れなければ、何がダメだったのかを真剣に反すうする。

 仕事で失敗することはそんな簡単ではない。だが、生活に新しい試みを取り入れることは、非常に有効だし、負荷も少ない。

 振り返ってみてほしい。ここ数年で、「無力で不安で仕方ない経験」をどれくらいしただろうか? 全くそういうことがないならば、そろそろ生活を見直す必要があるのかもしれない。

安達裕哉プロフィール

1975年東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア「Books&Apps」を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。Twitterアカウントはこちら


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