Mazda3に対してCX-30にプラスされたものは、高い着座位置によって得られる乗降性の良さ、アップライトなポジションによる視界の良さ、豊かになった室内空間とリヤシートの居住性、さらにラゲッジのサイズとテールゲートのオープンラインの低さである。メーターモジュールの組み立て家具を積み込む時の手の逃げ代まで考慮して荷室の幅を決めてある。
とにかくマツダの目指す走りの質に対して理想主義を貫いたMazda3と、その美点を極力失わない範囲で、日々の生活の実用性を加味したCX-30と考えると分かりやすい。足された機能分のバーターをゼロにすることは不可能だ。だからどちらも狙いに対して誠実にやれることをやってある。
CX-30を評して、今回ドイツ試乗会に参加したメンバーのひとりは、「これは長く乗っても飽きないでしょう。何ならこのままウチに乗って帰りたい」と言った。相当な褒め言葉だと思うが、それに異を唱えたメンバーは筆者も含めて誰もいなかった。
ちなみに1.8ディーゼルのトルク感はこのクルマのキャラクターにとても合っている。2.0Gのマイルドハイブリッドも決して悪くないが、MTで乗る限りにおいて、初期応答の悪い部分を使わずに済むので、現時点での暫定評価では1.8ディーゼルに軍配を上げておく。蛇足を加えれば、おそらくこちらもSKYACTIV-Xがベストバイになりそうな予感がする。
あとは価格がどうなるかだ。Mazda3の例を見ると、安くて驚くようなことはないだろうが、よっぽど高くない限りは商品価値と価格はちゃんと釣り合うものになると思う。中身の評価はそれだけ高い。
さて、商品ラインアップの弱点をしっかり埋めたCX-30は、相当に売れそうである。もちろんマツダもそれを期待している。CX-5とならぶマツダの新しい大黒柱になる可能性は極めて高い。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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