クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

大ヒットの予感 マツダCX-30池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2019年07月17日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]

大らかな走り味に見える商品の住み分け

 デザインで表現した違いは走りにも明確に現れている。CX-30に搭載されるパワーユニットはMazda3と同じく、2.0ガソリン・マイルドハイブリッド、1.8ディーゼル、そしてSKYACTIV-Xである。ちなみに今回試乗したのは、2.0マイルドハイブリッドのATと1.8ディーゼルのMTだ。1.8のディーゼルとATの組み合わせの初期応答については、多少の改善がされていると聞くが、今回は試していない。

 全体としての印象は、やはり同じ第7世代としてMazda3と共通したもので、総じてレベルが高い。乗り心地面でいえば、およそ時速60キロあたりを境に、上と下で少し印象が変わる。上は時速150キロを超えるアウトバーンの領域ですら文句なく素晴らしいが、下についてはタイヤ・ホイールの重さを受け止め切れていない印象が少し残る。路面の凹凸を拾った時の受け止め方はもう少し洗練させられるのではないか? もっと小径で幅の狭いタイヤ・ホイールを選べれば、そのあたりの印象は変わると思う。ただそれをいうのは少し贅沢(ぜいたく)かもしれない。Mazda3が凄すぎるというのもあるからだ。

 SUVらしく車高が上げられており、結果、重心も45ミリ上がっている。当然コーナリング時には、その分ロールは大きくなるが、それを無理矢理止めてフラットにしようとはしていない。もちろん程度問題ではあるが、Mazda3に比べれば、ロールを許容する大らかな乗り味に仕立てられている。

重心位置が45ミリ上がったことにより、大きくなったロールモーメントを無理矢理抑制せずに、動かしながら上手にいなしている

 ステアリングの切り始めの俊敏さも同じ傾向で、CX-30は全体に穏やかだ。家族みんなでドライブする時にドライバーだけ楽しくなってしまうようなことが、より起こりにくい仕立て。だからといって鈍重なことには決してなっていない。走りの質は高い。

 あくまでも第7世代の幅の中でCX-30は大らかな性格を持っていると見るべきだ。逆説的にいえば、兄弟車としてのCX-30があったからこそ、Mazda3をスポーティに振ることができたともいえる。

 思想性の高い第7世代のコンセプトに、より忠実なのはMazda3で、「すごいものを買った」感では勝る。その代表例はシートだ。骨格と筋肉の徹底した研究の成果がより精密に生かされているのはMazda3であり、CX-30では座面の高さを上げ、3度背もたれ角(トルソアングル)を立ててある。いわゆるアップライトなドライビングポジションになっているのだ。

 ところが第7世代シートはまだできたてほやほやだから、いかなるシートポジションでも自由自在とはいかず、座った瞬間に圧倒されるような凄みはMazda3の方が高い。しかしながらそのあたりは書き方が極めて難しい。旧来のシートと比較すれば、CX-30のシートもやはり第7世代ならではのもので、圧倒的に良い。より純度の高いMazda3とさえ比較しなければ、つべこべいう必要はないものになっている。欲をいえばキリがないし、クルマという工業製品はたゆまず進歩していくものなので、まだまだ成長代はあるというだけのことである。

見た目の良さだけではなく、スイッチやボタンなどの操作感にまで踏み込んだデザイン

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