彼は、「コンシュマーレポート」誌の話題でさらに饒舌(じょうぜつ)になった。コンシュマーレポートとは広告収入によらない商品評価レポート誌で、辛口評価とともにランキングが発表され、高評価を受けると北米での売り上げに直結する。このコンシュマーレポート4月号で、スバルの北米専用3列シートモデル「アセント」が最高点を獲得したのだ。
「いまコンシュマーレポートを見たお客さんがどんどんやって来ています。この間も、近所のフォルクスワーゲン・ディーラーの店頭にあったコンシュマーレポートをショールームで立ち読みしたお客様が、そのままそれを持ってこの店にやって来て、(フォルクスワーゲンの)ティグアンの代わりにフォレスターを買ったのです」
コンシュマーレポートが販売に大きな影響を与えるという話は当然知ってはいたが、影響の大きさについて少し甘くみていたかもしれない。現場の温度感を通して見たそのインパクトはよく理解できた。だとすると、そのコンシュマーレポートに高く評価されるためにスバルは一体どんな戦略を立てているのだろうか?
「コンシュマーレポートは中立性を重んじているので、何を基準に評価するかは完全なシークレットで、われわれもそれを知ることはできません。だからこそコンシュマーレポートには価値があるのです」
それはそうかもしれない。だとしても、過去の評価歴から傾向を分析するとか、信頼性や維持コストなど、コンシュマーレポート誌が絶対におろそかにしないであろう項目について、スバル自身が積極的に数字ベースのファクトデータを広く公開して、それらについての優秀性をアピールするとか、やれることはたくさんあるはずだ。
ただ評価されるのを待つだけだとすると、それはもう戦略でも何でもなく、ただのラッキーだ。もちろんベースとしてば、彼が言う通り、スバルが大事にしてきた「安全」と「耐久性」が大前提であることには筆者も異論はない。ダメな商品を高評価するほどコンシュマーレポートは甘くないだろう。だが、良ければトップが取れるのかといえばそんな簡単な話ではないはずだ。
プロダクトが良いことは永遠の基本だ。過去も未来もずっと継続してレベルアップをしなくてはいけない。「商品が良ければ黙っていても売れる」という話は、少なくとも21世紀のビジネスではない。良い商品であることに加えて、ブランド価値を高めるためにどんな戦略を立てていくのか、それを聞くために筆者はペンシルバニアまで来ているのだ。
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