さて、前編では、筆者がスバルの北米有力ディーラーへ行って、北米ビジネスの成功要因を探ろうとして、結局その理由らしきものをほぼ見つけられなかったことと、やっと見つけた戦略らしきものが、くだらない理由でオフレコ扱いになりそうな話を書いた。今回はそこから先の話である。
これまでスバルのラインアップでは子育て世代に訴求する多人数モデルが不足していた。そこを補うニューモデルとして投入されたのが北米向け3列シートモデルのアセントだ
結局北米での取材の途中、いくら議論しても結論は出なかった。そこで帰国後、スバル本社でもう一度説明をしてもらうことにした。北米でうまくいっているブランド価値訴求販売が、たまたまの偶然なのか、それとも綿密な計画に基づいた企業戦略なのかについてはっきり説明してもらいたい。筆者の意図はそこにある。
ただし、この時点で半ば見当はついていた。ブランド価値訴求販売が大事であることは、スバルは確かに認識している。「LOVEキャンペーン」は、その形がかなり変化球で現れたひとつである。しかし、あえていわせてもらえば、今それがうまく回っているのは、たまたま巡り合わせがスバルに圧倒的に利する方向へ向いただけで、おそらく全社を串刺しにする大きな戦略はないのだ。
もちろん戦術レベル、つまりセクションごとにはいろいろな努力をしている。米国北部の積雪地帯でのAWDの踏破力と故障しない信頼性。米国のピックアップトラックに比べればはるかにコンパクトで知的なパッケージ。加えて、北米で積み上げて来た安全性と耐久性の口コミ的評判。そこに世の中をより良くしたいという「LOVEキャンペーン」が強い援護射撃になり、アウトドア指向のユーザーが好むフレッシュなブランドという認知が広がった。加えてコンシュマーリポートでの1位獲得が重なり、まさに今、北米でのスバルブランドは盆と正月が一度に来たような状況にある。
- スバルが生まれ変わるために その1
筆者を、スバルは北米の有力ディーラーへと招待した。ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカ・スバル」は、新車・中古車を合わせた販売数で全米1位。新車のみに関しても、全米最多級である。「スバルは他と違う」と、この自動車販売のプロフェッショナルは、本気でそう思っている。けれど、具体的に何がどう違うのかが全く説明されない。北米ビジネスの成功について、何の戦略があり、何をしようとしているのか、それを知りたいのだ。
- スバルよ変われ
スバルが相次いで不祥事を引き起こす原因は一体何なのか? スバルのためにも、スバルの何が問題なのかきちんと書くべきだろうと思う。
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スバルの問題点を指摘した記事『スバルよ変われ』。そこで書いた「安全と愉しさ」だけでもなく、スバルの中期経営計画(中経)についても疑義があった。それは手の内を何も明かさない中経に何の意味があるかという疑問だ。スバルはもっと情報を開示し、スバルとはどういう価値を生み出す会社なのか。
- 続・スバルよ変われ(後編)――2040年のクルマ
前編の「安心と愉しさ」を実現するための、スバルの新たな3つの軸と、未来のスバルへの情報開示をどうしていくのかという話に続き、2030年、40年のスバルはどうなるか。STI社長兼スバル技監である平川良夫氏へのインタビューから。
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SUBARU(スバル)が米国で着実に成長している。販売台数は10年間で約3.5倍に。好調の背景に何があるのか。そのマーケティング戦略について、現地で探った。
- 雪上試乗会で考えるスバルの未来
スバルは、青森市内から八甲田山、十和田湖を経由して安比高原までのコースを走るアドベンチャー試乗会を開催した。日本屈指の過酷な積雪ルートでスバル自慢のAWDを検証してくれというわけだ。
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