クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
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» 2019年07月23日 07時10分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:スバルが生まれ変わるために  その2 (3/4)

[池田直渡,ITmedia]

組織の問題

 しかし、スバルの現実はそれとほど遠い。本社に出向いても、結局のところスバル側に投げてあった「戦略があるかないか、あるなら具体的な戦略を教えて欲しい」という質問には明確な回答はなかった。

 スバルは今こそブランド価値作戦を全社横断で実行すべきだ。企業戦略に関わる話なので、現場の人間には軽々に口にできないと言うのであれば、それを語る権限のある偉い人と会わせてくれと言うと、彼らは困惑してしまった。

 その意味するところが、もし「お前ごときに言われる筋合いはない。われわれには明確な戦略があって、作戦は着々と成功に向かっている」ということならば、むしろ全く問題ない。皮肉でも何でもなくホントにそれでいいのだ。スバルがこれからも強い会社であるならば、筆者が取材できるかどうかは大局的にはどうでもいい。ただ誰でもいいから信用できる書き手にそれを誠実に書いてもらって、スバルが何をしようとしているのかは、きちんと社会に対して発信すべきだ。

 しかし、多くの人々が途中でフリーズしてしまう状態を見ていると、そういう問題を扱う部署も、議題を上げるルートもそもそも存在していない感じがする。そして筆者の指摘の意味にすでに薄々以上に感づいていて、スバルは変わらなければならないという想いと葛藤を起こしているように見える。

 思い返せば、筆者は「スバルよ変われ」の中で、「運転席からの視界を重視するのは正しいが、視界が重要なのは『認知性能』を高めるからであって、だったらメーターをはじめとする他の認知性能に関わる部分は、なぜ同じ熱心さでアップデートされていかないのか?」という疑義を書いた。

コンシュマーレポート4月号で、最高点を獲得したスバルの「アセント」。スバルの最新モデルに共通したインパネデザインを与えられた

 それはつまり、マクロ的視野でクルマを見る視点の欠如だ。窓を設計する人だけが一生懸命「視野の確保」に取り組んでいて、もう一歩引いたところから、認知性能全体の問題として捉えて、全部署が価値観を共有するための戦略的マネジメントができていない。

 その時と同じだ。ブランド価値販売が大事なら、全ての部署にブランド価値販売を高めるプロジェクトへの参画を求めなくてはならないし、各部署間を調整し、問題点をくみ上げ、役目を割り振って実行させられる組織への変革が必要だ。内外に向けてそのプロジェクト戦略を説明できる「部署を超越した存在」も必要だ。それは普通に考えれば、経営戦略を司る部署または特命のフェローのような形になるはずだ。

 しかしスバルは、どうやら今も隣の部署が何をやっているかを知らないままでいるように思える。個別の部署やエンジニアの能力はものすごく高いはずなのに、それが力を合わせて同じ方向へ進むことができていない。

 具体的には、重要な経営目標として「認知性能を高めるためにそれぞれの部署が何をできるかを全て洗い出せ」、あるいは「ブランド価値を高めるためにそれぞれの部署が何をできるかを全て洗い出せ」という方向とプライオリティの設定と、行動指標を経営陣が明確に示すことだ。それが、筆者の見立て通りないのだとすれば、ガバナンスの不在だ。ガバナンスの不在は日本企業を蝕(むしば)む風土病だ。この30年の停滞を作った元凶でもある。

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