吉本興業の謝罪会見が、壮絶にスベった理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2019年07月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ムラの秩序」を優先

 これまで危機に直面した企業の話し合いに何度か同席したことがあるが、ほとんどの経営者は、とにかくいろいろな理屈をつけてとにかく謝罪会見を開かない方向へ持っていきたがる。「まだ調査中だ」「会見を開いても傷を広げるだけで逆効果だ」なんて感じで、「とりあえず静観しよう」という結論へ持っていくための材料を必死にかき集めるのだ。

 このような「隠ぺいバイアス」はごく普通の企業であっても当たり前のように存在するのだが、「ムラ」の中で生きる人々の場合、その傾向はさらに強まっていく。

 先ほど申し上げたように、これらの企業はどんなに社会から叩かれても、「ムラ」の中にいる限りは食いっぱぐれない。むしろ、逆に優等生ぶって謝罪会見などをしてしまったことで、「ムラ」の既得権益に世間の注目が集まるなどやぶ蛇になってしまう。つまり、何か不祥事が発生しても「静観する」ことのほうがインセンティブとなるのだ。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 今回も吉本側が会見を渋ったのは、芸人側が受け取った金銭の額がはっきりしていなかったとか、雑誌『FRIDAY』で新たな反社との写真が掲載されたので、今はまだ会見できる段階ではないなどと説明していたが、記者からしつこく質問が重ねられると、放送局に対してギャラはもらっていないと説明をしていたのに、それが「うそ」だったと打ち明けられて、何も考えられなくなった的なことを口走っていた。

 要するに、吉本興業という組織は、ファンの不信感や、芸人個人の将来よりも、「ムラ」の仲間にどう思われるのか、「ムラの秩序」をどうすれば守れるのか、ということに頭を悩ましていたということなのだ。そういう本音ベースの部分をひた隠しにして、「我々はみんな家族」とか「芸人ファースト」という歯の浮くようなもの言いをしたので、壮絶にスベってしまったのである。

 そして、この「大スベリ会見」の影の立役者というか、きっかけをアシストしたのが、吉本興業の顧問弁護士だ。

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