吉本興業の謝罪会見が、壮絶にスベった理由スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2019年07月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日常的にどう喝を受けていた

 顧問弁護士という人たちは法律のプロではあるのだが、「世論」にうとい。そのため、どうしても法的に後ろめたいことがない場合、コンプライアンス面が引っかかっていない場合、会見を止める側へまわりがちなのだ。筆者のような立場の人間が、問題を長期化させないためにも、世間に対して何かしらの説明をしたほうがいいと進言しても、マスコミやSNSにネタを提供するだけで、会社としてなんのメリットもないと潰しにかかるのだ。

 今回、宮迫さんと亮さんによれば、吉本の顧問弁護士は「今さらひっくり返らない」「会見に成功なんてない」といった主旨のことを述べたというが、筆者も全く同じ言葉を某不祥事企業の顧問弁護士から言われたことがある。

 そんな顧問弁護士のスベリ具合に加えて、あの会見をサムくさせているのが、全体に漂う「体育会ノリ」だ。岡本社長は天理大学のアメリカンフットボール部でクォーターバックを務めていたということもあり、「もともと体育会系の気質があり、厳しくモノを言うことはある」(日刊スポーツ 2019年7月21日)ことは業界でも有名だった。

 事実、極楽とんぼの加藤浩次さんも、朝の情報番組『スッキリ』で、宮迫さんらへのどう喝発言を受けて以下のような「素顔」を暴露している。

 「岡本さんをよく知っていますが、そういう人です。若い人にそういうことしてるのも見たことある。会社の社員に対してもどう喝みたいなことを言う人だっていうことを僕は知ってます」

 また、マネージャー時代から知る松本さんも、『ワイドナショー』で「たまに言葉遣いが横暴だったりして、20年ぐらい前からそれは気になっていた」と述べている。

 みな同じ釜の飯を食ってきた「仲間」なので大目に見てきたが、かなり以前から、岡本社長のパワハラは組織内では問題視されていたということなのだ。

 これは、おじさん管理職が職場や酒の席で、女性社員や若者を執拗(しつよう)にイジるのとよく似ている。本人は自分を面白いと勘違いしているので、『踊る!さんま御殿!!』のさんまさんのように、若者からネタを引き出し、場を和ませていると信じている。しかし、ハタからみると、単にしつこいセクハラやパワハラを続けているようにしか見えないのだ。

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