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働きがいがある会社が「企業カルチャーの共有」に熱心な理由(2/3 ページ)

» 2019年08月02日 12時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]

「言語化」するだけでなく、「共通化」してこそ価値がある

 各社が「大事にしているカルチャー」は異なるが、「カルチャーをきちんとそれを言語化している」という点では全社が共通していた。“自社らしさ”が言語化されていることで、自然と「これってfreeeらしいよね」「これはケンブリッジっぽくないな。もっと“Take Initiative”でいこうぜ」――といった会話が出てくるようになるのだろう。

 そして、言語化するだけでなく、社員たちが自然と「カルチャーって、大事だよね」と思ってくれるような環境を作ることに、各社ともかなりパワーを割いていることも分かった。経営理念と同じで、「キレイに額にいれて飾っておくだけでは意味がない」のだ。

 カルチャーを重視する会社にいるとよく分かるのだが、共通したカルチャーを持っている人と話していると、無用な対立やストレスが大幅に減る。

 例えばケンブリッジでは、「OPEN」というカルチャーが社員間で共有されているため、「OPENに、ストレートに、話しちゃうけど……」――という会話がしばしば起こる。この認識があるから、「どこまでストレートに話していいんだろう?」とか、「この人が言っているのは本音か? 建前か?」などという忖度は不要になるのだ。

 また、「RESPECT」というカルチャーも共通化されているので、厳しいフィードバックをもらった時でも、「俺のために言ってくれているんだ」という気持ちになれる。フィードバックする側も、相手がそうやって受け止めてくれると思えるからこそ、厳しいフィードバックができるのだ。

 企業カルチャーとは、そういうものだと思う。社員間で共通認識になるからこそ価値があるのだ。

カルチャーの共通化は、多様性に影響するのか?

 企業カルチャーを明確にして示すことで、「そこにハマらない人材を除外することになり、結果的に、画一的な人間しか集まらないのでは?」ということを気にする人もいるようだ。

 しかし、実際には、全然そうはならない。

 例えばケンブリッジでは、基本的な価値観はキッチリ共有しているものの、その他の面では、皆、違いすぎるぐらいに個性的だ。システムにめちゃくちゃ詳しいテクニカル人材もいれば、システムの知識は最低限でも、業務にものすごく詳しいビジネス人材もいる。プライベートで会社のメンバーと遊ぶのが好きな人も、プライベートでは絶対に会社の人とは会わないという人もいる。長くケンブリッジで働こうと思っている人もいれば、次のステージに行くための“宿り木”としてケンブリッジにいる人もいる。

 むしろ価値観が共通してるからこそ、その他の違いは気にならないし、理解し合える――という感覚である気がする。

 「同じことをする人」の集まりではなく「同じ価値観のもとで、違うことをする人」の集まりになるのだ。これこそが多様性社会の目指すところではないだろうか。

「企業カルチャーが浸透・共感された状態」を醸成する2タイプの取り組み

 次に、「企業カルチャーが浸透・共感された状態」を作るために、QOWLの各社が行っている具体的な取り組みを見てみよう。

 各社の取り組みを整理すると、大きく2つのタイプに分類できた。

  1. 採用時にカルチャー共感度の高い人を選ぶこと
  2. 採用後に自分たちのカルチャーを考える機会を作ること

1. カルチャー共感度の高い人を採用する

 各社の取り組みはこんな感じだ。

  • 最終面接は100%社長が自らやる(コンカー、ケンブリッジ)
  • 現場社員による、カジュアルな長時間面談(コンカー、ケンブリッジ)
  • 採用エージェントへの企業文化/価値観の説明(コンカー、ケンブリッジ)
  • スキルがあっても、「カルチャーフィットしないなら採用しない」というポリシー(gCストーリー、ケンブリッジ、コンカー)
  • 社風/文化を徹底的に体感してもらう「2泊3日高野山インターン」での採用プロセス(gCストーリー)

 共感度の高い人材を見極めるために、各社がやっているのは「接点を極力多く持つ」ということのようだ。

 gCストーリーが行っている2泊3日のインターンは、会社側にとっても、候補者側にとってもすごく手間と時間がかかっている取り組みだ。しかし一見、不合理に見えるプロセスでも、それを実施することがとても重要なのだと思う。

 各社と話していても「これくらいやらないと、見極められない」「採用した後でカルチャーが合わない方が大変」という声が出てくる。

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