「絶滅危機」のウナギ、真の復活への道とは「土用の丑の日」に憂う【後編】(1/6 ページ)

» 2019年07月26日 05時15分 公開
[真田康弘ITmedia]

 明日、7月27日にとうとうウナギ業界最大のイベント「土用の丑の日」が到来する――。「『土用の丑の日』に憂う」と題した本連載では、国民に広く親しまれてきた伝統食・ウナギの裏側がいかに黒いか、そして密輸や密漁、未報告のウナギの稚魚(シラスウナギ)由来のウナギの蒲焼が跋扈(ばっこ)する現状をレポートしてきた。

 記事の前編「絶滅危惧のウナギ――横行する“密漁・密輸”がもたらす『希望なき未来』」 では、台湾から香港を経て横行する「ウナギロンダリング」の現状と、資源増殖のために実施されている「放流」事業が、科学的根拠に基づくものではない点を指摘した。加えて、中編「“ウナギ密漁”の実態を追う――『まるでルパン三世の逃走劇』」では、高知県の事例を取材し、密漁の実態や取り締まりの最前線をお届けしてきた。

 後編では、日本全体の取り組みに広げて論じていきたい。違法行為を抑止し、ウナギ資源の保全と持続可能な利用を図る道としてはどのようなものがあるのだろうか。以下、(1)国際的規制、(2)国内的規制、(3)資源増加のための対策、(4)経済的なインセンティブ、(5)流通、消費者の役割、に分けて考える。

photo ウナギを保護していくために必要なものは?

国際的規制の強化:ワシントン条約の活用

 まず国際的規制の在り方に関して説明する。ニホンウナギについては現在、日本、中国、韓国、台湾で関係国協議を開催しており、2014年にそれらの4カ国の間で(1)ニホンウナギの池入れ数量(養殖池に入れる稚魚の数量)を直近の数量から20%削減し、異種ウナギについては近年(直近3か年)の水準より増やさないための措置をとること、(2)法的拘束力のある枠組み設立について検討すること、などが合意されている。

 しかし「20%」削減というのは科学的根拠に基づいたものでもなければ、資源保護のために十分とも言えない。また、中国は15年以降、非公式協議を欠席していて、地域的な法的拘束力のある枠組みの議論は全く進んでいない。

 さらに問題なのは、この会議で何がどのように話し合われているのか、外からは全く見えない点だ。報道関係者も、NGOオブザーバーも参加は認められておらず、会議は非公開、結果は水産庁のプレスリリースと記者会見で知らされるのみなのだ。透明性がゼロである。

 18年9月には「ニホンウナギに係る科学的データ・情報のレビュー等を行うとともに、今後どのような科学調査を実施すべきか等について、科学的な観点から議論が行」なうとして「ニホンウナギに係る地域ワークショップ」が開催されている。

 しかしこちらも中国は欠席で、結果は「具体的な措置の提案には至らなかった(みなと新聞18年9月25日)」と知らされるのみだった。このままでは、埒(らち)が明かない。

photo 日本、中国、韓国、台湾で決めた「ニホンウナギの池入れ数量を直近の数量から20%削減」の20%には科学的根拠がない(水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について(2019年7月)」より)
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