「絶滅危機」のウナギ、真の復活への道とは「土用の丑の日」に憂う【後編】(4/6 ページ)

» 2019年07月26日 05時15分 公開
[真田康弘ITmedia]

資源増加のための対策

 第三は資源増加のための、真に有効な取り組みの強化だ。

 14年と15年に環境省が実施した調査によると、堰(せき)やダム、落差工といった河川横断工作物がウナギの遡上に悪影響を与えていて、ウナギの個体数密度と相関していることが明らかとなっている。従って、まず手始めに、水位差が約40センチ以上の状態が恒常化している河川横断工作物については、必要不可欠でない場合はこれらを撤去し、ニホンウナギが遡上できる環境を整備すべきだ(環境省自然環境局野生生物課「ニホンウナギ生息地保全の考え方」、17年3月)。

 もし撤去が困難な場合は、魚道を整備したり、落差を緩和したら、ウナギを下流からくみ上げて堰やダムの上流に再放流したりするなどの対策をすべきだ。

 その一方、科学的にその効果がほぼ全く証明されていない養殖ウナギの放流、あるいは「石倉かご」と呼ばれる人工物の設置は、少なくとも税金を投入するものについては全面的な再考が必要だ。効果が全く不明なこうした事業に、高い説明責任が問われるはずの税金を投入すべきではない。

経済的なインセンティブ

 第四は経済的インセンティブだ。中編でレポートした高知県の事例のように、一部の地域では、ウナギ稚魚の採捕者が十分関与できない形で、できるだけ安く買いたい養鰻業者の主導によって買い取り価格が設定されている。安く買いたたかれたと考える採捕者は、高く買ってくれる闇業者に横流しする。ここで闇流通を発生させているのは、市場価格を歪(ゆが)める「不必要な介入」だ。採捕者と買い手側の相互行為に基づく自由な市場価格形成を阻害すべきではない。

 事実、水産庁も「都道府県において指定された出荷先への販売価格を設定している場合において、その設定価格が市場価格に比べて低いときには、再点検を行うこと」を都道府県に助言している(水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」19年7月)。

photo 水産庁も「都道府県において指定された出荷先への販売価格を設定している場合において、その設定価格が市場価格に比べて低いときには、再点検を行うこと」と都道府県に助言している(水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について(2019年7月)」より)

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