JR東日本は8月1日、電話ボックス型のシェアオフィス「STATION BOOTH」の正式提供を始めた。まずは東京駅、新宿駅、池袋駅、立川駅に設置し、移動の多いビジネスパーソンなどの利用を見込む。料金は15分250円(税別)から。予約には会員登録が必要だが、空いているブースがあれば予約不要で利用できる。
2018年11月から行っていた実証実験の結果を踏まえて正式サービス化したが、実験中には同社が想定していなかった「意外な需要」も見つかったという。利用者は一体何のために駅ナカシェアオフィスを使っていたのか。
話をしてくれたのは、同社の中島悠輝さんと本間淳介さん(共に事業創造部 新事業・地域活性化部門 シェアオフィスPT所属)。中島さんは「働き方改革や時間価値向上といったトレンドと、駅をもっと良くしたいという思いが重なったのがシェアオフィスだった」と話す。
都会を動き回るビジネスパーソンが移動拠点の駅でも働けるようになれば、「もう1件追加でアポイントメントを取る」「移動時間を有効活用して仕事を早く終わらせる」といったことが可能になると考えたのだ。
しかし、駅ナカシェアオフィスの実現には「スペースの確保」という問題があった。駅には券売機、トイレ、休憩用のベンチ、自動販売機など設置するものが多く、一般的なコワーキングスペースのようなスペースを確保するのは難しい。
そこで、限られたスペースでも設置できる個室型のブースを採用。騒音や人目を気にすることなく作業できるようにし、駅利用前後の“隙間時間”での利用を狙うことにした。実際に、実証実験ではオンラインミーティングや営業電話、資料作成などを行う利用者が多かったという。
一方で、想定外の需要も見つかった。防音の個室という特徴を生かして、オンライン英会話や仮眠など、ビジネスシーン以外に使う利用者が現れたのだ。本間さんは「特に、ブースを見つけた高校生の言葉が印象に残った」と話す。
「彼らはブースを見て『あ、自習室だ』と言ったんです。自習室という言葉自体、頭から抜け落ちていたが、高校生にはそう見えるのか、と目から鱗が落ちた。今後は、試験当日の受験勉強などのニーズも出てくるかもしれない」(本間さん)
さらに、立川駅に設置した2人用ブースには「机いっぱいにドリルを広げて宿題をする親子」や「友達とスマホをいじっているだけの女子高生」などの姿も見られたという。
現在提供しているSTATION BOOTHには、こうした例も含め、実証実験で得たフィードバックを反映。「少しでも足を伸ばして座れるよう、机と椅子の配置を換える」「1ブースに1台エアコンを設置する」――といった工夫を凝らした。今後も引き続き改良を続けながら、2020年までに30駅に展開する計画だ。
中島さんは「駅は老若男女誰もが使う場所。シェアオフィスをうたってはいるが、仮眠したり、涼みにきたり、自由に使ってほしい」と話す。「担当者としては、30といわず、何百、何千とブースを展開したい。ゆくゆくは、当たり前のようにある『駅のインフラ』にすることができたら」
項目 | 概要 |
---|---|
設置場所 | JR東京駅(1人用7台)、新宿駅(1人用4台)、池袋駅(1人用4台)、立川駅(エキュート立川内/1人用3台、2人用2台) |
営業時間 | 午前7時から午後9時半(立川駅のみ日祝は午後9時まで) |
ドロップイン | ○ |
利用料金 | 15分250円(2人用は300円、税別)(※当面は1人用150円、2人用200円で提供予定) |
鍵の開閉 | QRコード、交通系ICカード(会員のみ) |
電源 | ○(電源、USBコンセント) |
Wi-Fi | ○(無料) |
空調 | ○(1ブースにつきエアコン1台) |
会話・通話 | ○ |
予約 | 会員のみ可 |
トイレ | なし |
決済方法 | 会員種別により異なる(法人会員:法人クレジットカードのみ/個人会員:クレジットカードと交通系電子マネー/会員登録なし:交通系電子マネーのみ) |
その他 | デスク、イス、照明、モニター、アロマあり |
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