「令和改元」という“機密ミッション”の舞台裏 隠されたキーマンを追う“国家プロジェクト”はいかに遂行されたか(5/5 ページ)

» 2019年08月05日 07時10分 公開
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看板の無い極秘の作業部屋

 首相官邸と道路を挟んだ向かいにある内閣府本府庁舎。6階建ての建物には、内閣府だけでなく、官邸に入りきらない内閣官房職員も陣取る。元号担当の古谷一之官房副長官補(63)の執務室や、「副長官補室」の職員らが集まる部屋があるのは、この建物の5階だ。

 内政全般の課題が集中する5階に対し、地下1階には、元号や皇室に関する業務に絞った極秘の作業部屋がある。そうした部屋に、部署名を示す看板はない。

 その地下1階に向かうある男性職員に、取材班の記者が気付いたのは2018年秋だ。1階ロビーで省庁幹部の出勤を待つ日常的な取材をする中で、出勤中のその職員の独特な仕草(しぐさ)が記者の目を引いた。

 平日の午前9時半前後。出勤する職員たちが庁舎1階のゲートを途切れることなく通過してエレベーターや階段に急ぐ中、その職員は、通過後すぐに体を反転させ周囲をぐるりと見回していた。流れに逆らい尾行を警戒するかのような行動。その行動の後、人目につきにくいルートを選んで地下1階へと消えていく姿が連日見られた。

 取材の結果、その職員が、尼子氏から「特定問題担当」を引き継いだことが判明した。何度か取材を試みたが、職員が応じることはなかった。「副長官補室座席図」には、地下1階の作業部屋に関する記載はなく、この職員の名前も見当たらなかった。

 しかし新元号発表を翌日に控えた2019年3月31日、首相官邸にこの職員が現れた。元号担当の古谷氏に加え、古谷氏の元号業務を補佐する開出英之内閣審議官が日曜日の官邸に慌ただしく出入りを繰り返す中、この職員も少なくとも3回、静かに官邸入りしていた。

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