起業、パラレルキャリア、はたまた奴隷？ 「個の時代」、人生ゲームの勝者は誰だ：長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」in 沖縄（3/3 ページ）

[酒井真弓，ITmedia]

大きいことをしようとしたら、サラリーマン

友岡：　僕は全然独立しようとは思わないのね。ある程度大きなことをしようと思ったら組織の力を使ったほうがいい。会社のキャッシュを使って大きなことができるって、たまらなく楽しいよ。

フジテックCIOの友岡賢二氏

長谷川：　「個＝独立」だけではないですね。

友岡：　僕が一社のCIOをやりながら外で講演したり、メディアに出たりするのは、自社だけだとスケールできる範囲が限られてしまうから。外で発信することで、社外の同志とつながり、もっと大きなことができるようになると思っています。

長谷川：　友岡さんは今年（2019年）から、特定非営利活動法人「CIO Lounge」の活動を始めましたよね。友岡さんをはじめ現役のCIOなどが企業に対して無料でITコンサルティングをするというもので、今までにない取り組みですよね。

友岡：　AI、IoTといったテクノロジーをいかにビジネスに取り込み、伸長させるかが経営課題となる中で、その中核を担うべきCIOがいる会社って、日本ではたったの10％なんですよ。一方、米国でCIOがいない会社はほぼありません。具体的なノウハウはもちろんだけど、このギャップが日本企業が遅滞する一因だと経営者に伝えたい。わざわざ特定非営利活動法人にしたのは、大企業から見ても「中立的で信頼できる組織」として活用してもらいやすくしたかったからです。

自分が勝てるゲームを知っているか

長谷川：　僕は、マレーシアの企業で働く友人が「長谷川さん、アングロ・サクソンに勝てるわけないやん」と言っていたのが印象に残っていて……

小島：　それは真理で、自分が戦うフィールドを定義するのって、ゲームに勝つためにすごく重要なことですよね。自分はどんなゲームが得意か分かっている方がやりやすい。

米須：　「自分はこのゲームなら勝てる」って、どうやったら分かるの？

小島：　いろんなゲームに挑戦して負けると分かってきますよね。

喜多羅：　僕は、転職先が合わずに2カ月で辞めてプータローになり、日がな一日、息子と新幹線を眺めるという“どん底”を経験して、自分がドライブしている実感が得られない、偉い人がたくさんいてお伺いを立てないとならない――そういう環境ではダメなことを痛感しましたよ。

米須：　そもそもスタートが違うのかなって気もするんだよね。奴隷スタートでは、偉くなってもせいぜい奴隷頭。そこから上にいくのはだいぶ難しいのかなって。

小島：　奴隷頭しか見たことがなければ、そうなるかもしれない。でも、属している組織以外の“ものさし”をたくさん知ると、意外とそこから脱却できると思うよ。

友岡：　　外にも“背中”は必要だよね。目指したくなる大きな背中。僕は会社員だから、見ようによっては奴隷頭かもしれない。でも、問題はそれが良い悪いではなく、自分にとって幸せかどうか。

長谷川：　友岡さんの幸せの基準って何？

友岡：　僕の場合は、自分がコントロールできる範囲がどれだけ大きいかがポイントだね。だから、戦うフィールドとして、外資系の大企業は選ばない。売上2000億円くらいまでで、日本から世界に出ていこうという事業会社がちょうどいい。

【後編に続く】

フジテック CIO 友岡賢二氏プロフィール

1989年松下電器産業（現パナソニック）入社。独英米に計12年間駐在。ファーストリテイリング 業務情報システム部 部長を経て、2014年フジテックに入社。一貫して日本企業のグローバル化を支えるIT構築に従事。

日清食品HD CIO 喜多羅滋夫氏プロフィール

P&Gとフィリップモリスにて20年余りIT部門に従事した後、2013年日清食品ホールディングスにCIOとして入社。グローバル化と標準化を軸に、グループ情報基盤の改革を推進中。

パラレルマーケター 小島英揮氏プロフィール

25年以上、ITのマーケティング業務に従事。2009年〜2016年、AWSの日本のマーケティングを統括。現在、オンライン決済やAI等複数のIT企業でのマーケティングを軸に、パラレルキャリアを実践中。

クラウドネイティブ CEO 齊藤愼仁氏プロフィール

アイレットにて社内インフラのセクションリーダーを担当。情報システム、ネットワーク、セキュリティの3チームを統括し、情報セキュリティ管理責任者、個人情報管理責任者、PCI DSS管理責任者を兼務。2017年8月、クラウドネイティブを起業。

サイオンコミュニケーションズ 米須渉氏プロフィール

サイオンコミュニケーションズ所属。JAWS-UG沖縄コアメンバー。IRCでインターネットに触れ、そのままIT系企業に就職。コミュニティーでは「クロージング芸人」を名乗り、個性的なクロージングを披露。PTA活動では、子供たちに「チャラい」といじられている。

メルカリ CIO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。東急ハンズの執行役員と兼任。AWSの企業向けユーザー会（E-JAWS）のコミッティーメンバーでもある。2018年10月から現職。