#SHIFT

メディアドゥの社長はなぜ、マイノリティーの登用を恐れないのか 情シス部長に50代半ばの女性、ベトナム人採用の背景(2/5 ページ)

» 2019年09月13日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

ベトナム人エンジニアを採用した理由

Photo

和田: 情報システム部にはベトナム国籍の方が4人在籍されているとお聞きしたのですが、海外の方も積極的に採用されているのですか?

藤田: そういう時期があったのですが、当社の受け入れ態勢が整っていなかったので現状では「積極的に」とはいえません。ただ、今、いる方たちがスムーズに働けるようになったら、また採用を再開するつもりです。

和田: 女性にしろ、外国の方にしろ、今の会社の中ではマイノリティーになりますよね。そういう方々を組織に受け入れるときに、気を付けている点や改革している点はありますか?

藤田: ベトナム国籍の社員については、入社直後は専門の講師を招いて日本語の授業をしてもらったり、その後もメンターをつけてサポートしたり、ということはしています。会社としては、きちんと受け入れ態勢を整え、大切に扱おうという方針ですが、現場で実践するのはなかなか難しいところがありました。どうしても、「目の前のミッションに対する戦力になるのかどうか」という目で見てしまうんですよね。

 彼らは新卒で入ったので、最初は技術力が足りませんでしたが、2〜3年たって、やっと戦力になり得る状態になってきたところです。海外から採用するなら最初は経験者を採り、外国人が受け入れられやすい土壌を作った方が良かったのかもしれません。そういう意味では、最初に入った方たちには苦労をさせてしまいました。

 ただ、「ちょっと技術力が足りないんだよね」といわれることが多かった彼らのことを、河野さんは「ちゃんと活躍できる!」と言ったんです。その違いはどこから来るのかというと、やはり受容性といいますか、上司として人の可能性をちゃんと理解して活躍させてあげようという思いがあるかどうかなんだと思うんですよね。そこは大きな課題だと感じたので、8月から外部の先生を招いて、女性やLGBTなども含むダイバーシティを理解するための勉強会を社内で開催しています。

和田: それはいいですね。河野さんの採用では、それによって女性社員の意識が変わることを期待されたということでしたが、ベトナムの方を採用したのには、どういう目的があったのでしょうか?

藤田: 一般的には、日本からみて勢いがある国というのは米国、最近であれば中国ですよね。ベトナムはこれから、という位置付けです。でも、「そこにはとても優秀な人がいるんだ」と理解することが大事です。経済的にまだこれからの国が、今後も自分たちより下だという色眼鏡で見ることをやめなければならない。それがベトナム人を採用した理由の1つです。

 もう1つの理由は、彼らはハノイ工科大学でしっかりと勉強してきた人たちで、フラットに見て本当に優秀だということです。5年後には、そういう方たちに選ばれる会社になっていたい。そのために、彼らがマイノリティーになってしまう環境を変えていく必要があります。

社長として見るべきことのトップは「売上や利益」ではない

和田: 会社にマイノリティーが存在することや、ダイバーシティのある状況というのは、事業戦略上はどういう意味がありますか?

藤田: 私が重視しているのは、サステナブル(持続可能)な経営ができていることや、SDGs、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)の観点です。当然、その文脈には、ダイバーシティや、マイノリティーをどう扱うのか――といったことも含まれています。

和田: そういったことを気にするようになったきっかけは?

藤田: 会社のトップは、社内の誰よりも遠くを見なければいけません。そして、お山の大将でいるのではなく、社会の末端でいなければいけない。トップがそういうことに気付く機会があることが、とても大事だと考えています。

 私にとって大きかったのは、EO(Entrepreneurs’ Organization)という若手起業家団体での経験です。世界に1万4千人の会員がいて、私はこの7月、日本に6つある支部のうちで最も規模の大きいEO Tokyoの会長に就任しました。500人以上いる猛者たちをいかにリードしていくのかと考えたとき、SDGsやESG経営というものをしっかり理解する必要があると気付いたんです。

 昔なら、多額の売上や利益を上げている経営者にみんながついていく――という状況がありましたが、今は会社、あるいは個人として何を大切にしているのか、というところが注目されます。だから、事業の結果のPL(損益計算書)だけでなく、会社もしくは個人のBS(資産)が大事なのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.