小島: 始めにした「地方から東京へ出ていこうとする人が少ない」って話は、「日本から世界へ出ていこうとする人が少ない」のと構図は一緒だよね。外の世界を知らなければ、ギャップを正しく認識することはできません。例えば、多くの日本人は、いまだに日本はアメリカに続く第2位の経済大国だというつもりでいる。でも実際は、既にGDPも中国に抜かれてダブルスコアになっているわけ。
今の日本の問題は、「自分たちはビハインドしていない」と思っているところ。日本のものづくりは世界一だとか言うんですけど、いや、実態と合っていないでしょうと。それを認識しない限りリカバリーできないし、これから成長していく領域に一線級の人材を充てられないと思います。
米須: 確かに、成長領域に人を充てられていないというのは感じますね。
小島: それが、孫さんの「日本はAI後進国」という発言につながるわけですよね。「今の時代、いくら(ハードウェアとしての)自動車を作れても仕方がない」ということを彼は言っているんです。
長谷川: 製造業では世界を席巻した日本が、ソフトウェアで覇権を握れないのはなぜだと思う?
中国と同様、昔の日本はパクるのうまかったじゃないですか。例えば、海外からERP(基幹業務を統合し、総合的な経営を行うためのシステム)が出てきたときに、もっと良いERPを作ればよかったんですよね。参考にして、もっといいものを作れたはず。でも、なぜかそれができなかった。
喜多羅: 私見ですが、ソフトウェアはハードウェアのおまけだという価値観から長く抜け出せなかったからじゃないでしょうかね。実際、ハードウェアの改良だけで変わっていく世界ってあるじゃないですか。それがあまりにも重視されてきたので、その上に載っているソフトウェアの価値が認められなかった。
小島: 典型的な「イノベーションのジレンマ」ですよね。「ものづくりこそが日本」だと思ってしまっていた。
長谷川: 日本企業のIT活用の傾向として、収益や生産性を上げるのではなく、現場のユーザビリティばかり重視してしまうというのもあるよね。カスタマイズにカスタマイズを重ねて社内システムを使いやすくして、現場の満足度は上がっているけれど、事業や経営に対してのプロフィットは出せていない、とか……。これが米国企業だと、社内システムなんて「画面使いにくくてもお前やっときや」となる。そこが違う。
齊藤: でも、日本の社内システムで使いやすいものに会ったことないですけど。
喜多羅: 相対的には外資系企業の社内システムのほうが使いにくいものが多いと思うよ。というか、彼らにとって、社内システムが使いやすいかどうかなんて議論すべきポイントではないということだと思う。
齊藤: 日本は、ITリテラシーがない人でも使えるシステムにしろって言うよね。使いやすくするのは大切だけど、「ITが使えなくても良いんだ」という風潮は老害を量産するし、米国、中国、IT新興国との格差はますます広がりますよ。
長谷川: 日本のITの現状ってね、僕らみたいなおっさん軍団の責任ですよ。
米須: 沖縄では、台湾に留学する学生が増えているんです。どうせ外へ出るなら、東京も台湾もコストは同じ。であれば、中国語も英語も使う台湾を選ぼうと。
小島: それは良いね。まったく違う“ものさし”を得られますよね。
喜多羅: 周りにそういう人が増えると、心理的なハードルも下がるよね。「アイツも台湾に行ってるなら、自分だって」と思えることのインパクトってすごいですよ。身を置く環境をどう選ぶかって大事です。
米須: 僕の仕事は、沖縄の県立学校をまとめて面倒見る情シスなんだけど、ITで先生の負担を軽くして、生徒たちと向き合う時間を作ってあげたいと思ってる。僕が構築したシステムを使って、ITに興味を持ってくれる生徒が一人でもいたら僕の勝利。次の世代を育てるのが、僕らおっさんの仕事さー。
【前編を読む】
1989年松下電器産業(現パナソニック)入社。独英米に計12年間駐在。ファーストリテイリング 業務情報システム部 部長を経て、2014年フジテックに入社。一貫して日本企業のグローバル化を支えるIT構築に従事。
P&Gとフィリップモリスにて20年余りIT部門に従事した後、2013年日清食品ホールディングスにCIOとして入社。グローバル化と標準化を軸に、グループ情報基盤の改革を推進中。
25年以上、ITのマーケティング業務に従事。2009年〜2016年、AWSの日本のマーケティングを統括。現在、オンライン決済やAI等複数のIT企業でのマーケティングを軸に、パラレルキャリアを実践中。
アイレットにて社内インフラのセクションリーダーを担当。情報システム、ネットワーク、セキュリティの3チームを統括し、情報セキュリティ管理責任者、個人情報管理責任者、PCI DSS管理責任者を兼務。2017年8月、クラウドネイティブを起業。
サイオンコミュニケーションズ所属。JAWS-UG沖縄コアメンバー。IRCでインターネットに触れ、そのままIT系企業に就職。コミュニティーでは「クロージング芸人」を名乗り、個性的なクロージングを披露。PTA活動では、子供たちに「チャラい」といじられている。
1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。東急ハンズの執行役員と兼任。AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。2018年10月から現職。
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