「セクシー大臣」を騒ぎ立てる“ジジイの壁” 失われる日本の競争力河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2019年09月27日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

日本が「温暖化対策のリーダーシップ」をなくした理由

 2017年11月、ドイツ・ボンで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)で、日本は地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」を受賞。1990年代に世界の温暖化防止活動のリーダーシップをとっていたとは思えない不名誉な出来事です。

 世界的に進む脱石炭火力の潮流の中で、日本だけが石炭火力の推進に力を入れ、石炭火力発電容量を追加している、G7で唯一の国。このままでは「温暖化対策に消極的な日本」への批判は高まるばかりで、国際社会から孤立しかねない状況です。

 かつて欧州が環境政策を主導し、日本は環境技術力で存在感を示してきましたが、欧州はさらなるリーダーシップを発揮し、中国も頭角を現している。アップルやグーグル、ユニリーバといった欧米企業が技術力を高め、日本は完全に埋没しています。

 セクシーがどうだとか言ってる場合じゃない。まさにこの連載タイトルの「ジジイの壁」。「前例がない」「組織の論理が分かっていない」を合言葉に、目立ちすぎる異物=小泉大臣に、徒党を組んで抵抗するジジイの壁が高く高く立ちはだかっていることで、「本当の問題=温暖化対策への消極的姿勢」が隠されてしまったのです。

 そもそもなぜ、日本は温暖化対策のリーダー的立場を失墜してしまったのか? 理由は大きく2つ考えられます。

 1つ目は、日本は世界に先駆けて先進的な省エネ技術を開発するなど、積極的に取り組んできたため、2000年以降は「これ以上やることはない」という言説の流布とともに、「米国や中国がもっとやるべき!」と責任転嫁をしてきました。そういった状況でトランプ米大統領がパリ協定からの脱退を表明。「アメリカがやらないんなら、日本だってやる必要ないじゃん」と、米国=世界と盲信する“ジジイ”たちが温暖化対策と距離を取り始めたのです。

 それと同時に、これが2つ目の理由になりますが、日本には「将来のカタチ」が描かれていません。温暖化対策のような長期的な対策は、100年先を見据えた「国のカタチ」を描き、その姿に近づけるために前例を覆す努力が必要なのに、それにほとんど手をつけていません。

 戦後日本のエネルギー政策は、原発と石炭火力の2本柱で進めてきました。それを大きく転換し、再生可能エネルギーや水素エネルギー、電気自動車活用などのエネルギー政策を早急に実行しなくてはならないのに、“ぼちぼち”しかやっていないのです。

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