世界初の乗りもの「DMV」 四国の小さな町は“新しい波”に乗れるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

» 2019年10月04日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 マイクロバスで海陽町の名所、観光地を巡るときは、すでに観光客の視点になっている。この街のどこが楽しいか、インスタ映えする場所はあるか。海を見渡す温泉があり、伝統的な漁村がある。古く趣のある街並みに「ぶっちょうづくり」という珍しい家屋があり、上下の板をパタンと閉じれば窓を封じて風よけになる。開けば上の板は日よけ、下の板は縁台や干物作りの台になるという。地元の人々には見慣れた風景が、実は観光客には興味深い。

 視察後の会議では、地域の観光資源とDMVをリンクした広報、宣伝活動について意見交換が行われた。まだDMVの運行ダイヤなどは決まっていないけれども、観光ルートを策定して、土休日や平日日中のバスルートを提案していく。また、営業運行前にDMV車両を出張展示するという大胆な提案が行われ盛り上がった。

 鉄道技術展で「ゆりかもめ」の実物車両が展示された事例があるけれども、あれはメーカーの三菱重工が自社技術を紹介するためだった。ローカル鉄道会社のPRで、実際の運行車両を持参するとは異例だ。道路を自走できるDMVだからできる。そして、営業運行開始前の今だからできる。世界初の鉄道誘客手法かもしれない。

 DMVの出張展示が行われるのは、10月5日のDMV3台完成イベントだ。導入予定地の阿波海南文化村と海の駅東洋町で行われる。今後はイベントなどに積極的に出展していくため、各地の集客施設に働きかけるという。

DMVを観光活用する「あさチェン推進会議」の構成図(配布資料より作成)。今回は「広報誘客部会」が行われた。現行車両の行方も鉄道ファンには気になるところだ

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