クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

クルマの「つながる」が分からない池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2019年10月15日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

専用通信端末の導入とインセンティブ

 こういう進歩したのかしていないのか判然としない時代を経て、ITSを包括しつつ、さらに機能を向上させたシステムが搭載されたのは、2017年のプリウスPHVだ。

 プリウスPHVにはDCM(Data Communication Module)と呼ばれる、車両専用の通信モジュールが搭載された。最大のポイントは通信容量の拡大だ。DCMでは音声とデータ高速通信が可能になったので、車両側が持つ数多くのセンサーからのデータと、前方カメラの映像をセットでクラウドに送信可能なスペックになった。

トヨタのDCMの仕組み

 それはつまりクラウドサーバを使うことで、全ての演算を車両側のCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)でやらなくてもOKな時代へ向けた布石である。しかしながらプリウスPHVの段階では、まだ実験に近く、ユーザーメリットの提示もあまり明確ではなかった。唯一「ヘルプネット」と名付けられた緊急通報システムが次世代らしいもので、これは事故発生時に、クルマに搭載された加速度計が事故の衝撃などの詳細情報を計測し、医療機関とオペレーションセンターにほぼ同時通報するもので、場合によってはドクターヘリが出動してくれる場合もある(関連記事参照)。

クラウンが搭載したヘルプネット。緊急事態に備えて専門オペレーターが待機し、警察や消防への取次を行う

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