卸売会社の3代目社長は、なぜ「うんこ」へ舵を切ったのかクラウドファンディングの達成率は500%超(3/5 ページ)

» 2019年10月18日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

小売りを始めて大ひんしゅく

 過去には作業服の小売店を立ち上げたこともある。商品を利用する人や、取引先である小売店が必要とすることを知ろうとしたのがきっかけだ。そのころはまだ入社してから日も浅く、「何を売っているのか、誰に売っているのかさっぱり分からなかった」と野畑氏は話す。店を立ち上げてからは、朝の4時に家を出て、日付が変わるまで働くような生活を1年半ほど行った。売り上げが振るわずすぐに閉店となったが、1つのことが見えてきたという。

 それは、「価格競争の激しさ」だ。もちろん、消費者からの「この商品のこの部分は縫製が甘い」といったような声を受けて商品知識を学ぶこともあったという。それ以上に、小売店という立場から見えた卸売業の価格競争が目立った。立場上、仕入れ先の卸売業者がどんどんと店を訪問してくる。どの業者も、1円単位でしのぎを削る。こうした中で、競合が出てこないようなオリジナル商品を作る必要性があると強く感じたという。

クラウドファンディングで製作した愛のうんこ時計。文字盤は数字ではなく「う」「ん」「こ」の文字で構成される。時針、分針の先端もうんこというこだわり

 リアル店舗だけでなく、オンラインショップも手掛けた。00年代の中盤ごろからオンラインショップが脚光を浴び始めた。また野畑氏によれば、ホームセンターチェーンなど大規模店舗を除いた場合、作業用品小売店の売り上げトップ10のうち、5つをオンラインショップが占める。小売店を立ち上げたときのように、主要な取引先になりつつあるオンラインショップのことを研究しようと08年にショップを立ち上げた。

 しかし、取引先の小売店などから猛烈なバッシングを受けて、半年ほどでこちらも閉店。卸売業を営んでいながら小売業も行うとなれば、破格の値段で販売することができる。リアル店舗のときにもこうした批判はあったが、当時は店に来ないと買い物ができない。しかし、世界中どこからでも買い物ができるオンラインショップとなれば話は別だ。得意先の多くの反感を買ってしまい、リアル店舗のときとは比べものにならないほどのひんしゅくを買ったという。

 この経験を通して学んだことも、「結局は価格競争」という結論だった。「丁寧に梱包したり、商品に手紙を添えたりといったサービスをしているところもある。しかし、簡単に価格比較ができてしまうので、どうやっても価格競争に巻き込まれてしまう」

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