卸売会社の3代目社長は、なぜ「うんこ」へ舵を切ったのかクラウドファンディングの達成率は500%超(4/5 ページ)

» 2019年10月18日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

うんこは同業他社がない

 こうしたほろ苦い経験などを踏まえ、長年作業用品以外の分野について検討を重ねてきた野畑氏。介護、医療産業やペット産業、ガーデニング、エンターテインメント……。さまざまに思いを巡らせた中、最終的に目を付けたのがうんこだった。

 しかし、扱う内容がうんこなだけに、社長のリーダーシップだけでは物事が進まない。のばのばの従業員からは、やはり「うんこだから」という理由でなかなか理解を得られずにいるという。少しでも理解をしてもらおうと、野畑氏はこれまでに3回、のばのばを取り巻く情勢やうんこに取り組む必要性などを従業員向けにプレゼンしている。

定期的に発行する「うんこ新聞」

 こうした逆風の吹く状況でもうんこに徹底的に取り組むことになったきっかけとなったエピソードがある。

 野畑氏は5年ほど前から、面白半分で作ったTシャツを知人に配っていた。その一環で、あるオンラインショップに出品してみたところ、何枚か売れた。その後、特に在庫の補充などをせず欠品状態で放っておいたところ、商品に関して問い合わせが来たという。

 問い合わせてきた男性はバーを営んでおり、「お店で広めておきます」と言われたため、後日店を訪れた。すると、スタッフからお客に至るまでがうんこの話題で持ち切りになっていた。思いも寄らぬ反響を受けて、うんこに徹底的に取り組むことに「踏ん切り」が付いたという。「何しろうんこなので、同業他社が存在しない」と野畑氏は話す。価格競争から離れたところでビジネスをするには最適の条件だ。

 競合がいないことにより、のばのばのリソースも最大限に活用できる。作業服の製造で培った刺しゅうや、安全靴のノウハウを存分に生かし、さまざまなうんこグッズを展開。製造から販売までを手掛けられてコストを抑えられるとともに、オンラインショップを開いても誰からも文句を言われない。

狙いは海外 既に手応えも

 さらに、国内企業の課題となっている少子高齢化の影響もあまり及ばない。「市場は国内の1億人ではなく、世界中の70億人」と鼻息も荒い。実際に、海外での手応えは既に感じている。

 のばのばの取引銀行の支店長が訪れた際、うんこに目を付けた。他にもいくつかある取引先の銀行担当者とも、訪れた際の話題としてうんこは役立っていた。しかし、この支店長は「カラーリングを変えれば絶対に売れる」「海外にビジネスチャンスがあるはず」とかなり興味津々だったという。これがきっかけとなり、支店長が海外支局へPR。その結果、ロサンゼルスとニューヨークから引き合いがあったという。

 ニューヨークに行った際には、税関でスーツケースの中身をチェックされた際、ぎっしりと詰まったうんこグッズに職員一同が大爆笑。「これでニューヨークはもらったな」と手応えを感じた。訪れた日本貿易振興機構(JETRO)のニューヨーク事務所でも、「メッセージ性がある」と評価された。予定していた面談時間を大幅にオーバーして盛り上がり、担当ではない職員も各所から集まって見にきたという。「1分1秒でも約束の時間に遅れるとシャットアウトされて面会もしてくれないと聞いていたのに」と予想外の反響だった。うんこの映画を撮影しているという監督にも偶然出会い、ニューヨークの街を背景にPR動画を撮影。SNS上でキャストを募集すると、ものすごい勢いで応募が来たという。

 不思議なことに、とぐろを巻いたうんこは日本だけでなく世界共通の認識でもあるという。野畑氏は、街で外国人とすれ違ったり、店で隣り合わせたりした際にはスケッチブックに必ずうんこの絵を描いてもらっている。そうすると、不思議なことにほとんどがとぐろを巻いたうんこを描くのだという。また、「うんこを描いてください」と伝えると、必ず笑顔になるのだとか。

 ただ、課題ももちろんある。例えば米国では訴訟文化が活発で、不良品などは激しいバッシングを受けやすい。また、各国で販売する場合には製造拠点を作らないと、配送にコストがかかってしまう。こうした課題を1つずつ解決し、徐々に展開していくことを思い描く。

世界各国の外国人が描いたうんこの絵(出所:うんこ公式Webサイト)

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