卸売会社の3代目社長は、なぜ「うんこ」へ舵を切ったのかクラウドファンディングの達成率は500%超(2/5 ページ)

» 2019年10月18日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

本社はプレハブ

 再開発が進む南町田グランベリーパーク駅(東京都町田市)。ここから車で10分ほどのところにうんこのオフィスはある。オフィスといっても高層ビルの1室や持ちビルではなく、プレハブ。オンラインショップ「UNCO SHOP」を中心に販売しているうんこグッズなどの倉庫として普段は機能している。また、周辺には横浜総合卸センターがあり、一帯には卸売業を営む企業が多く存在する。

 実は同社、建設現場で足を保護するために履かれる“安全靴”などの製造や卸売りを行う「株式会社のばのば」(横浜市)の関連会社なのだ。うんこ社長こと野畑氏はのばのばの3代目社長も務める。野畑氏によれば、本業である卸売業だけではなく、新たなジャンルに挑戦したいと考え、うんこに目を付けたという。

「うんこ社長」こと野畑氏。のばのばの社長でもある

 のばのばでは、売り上げの7割以上を履物が占めている。ほとんどが建築や建設現場で使われるものだ。以前からこうした一極集中のビジネスモデルに対して、ビジネスの幅を広げる必要性を感じ試行錯誤を重ねていた。

 野畑氏によれば、「のばのばは安全靴を扱う会社としては老舗の方」。1990年に安全靴を発売してから、順調に自社商品の製造販売や卸売りで業績を伸ばしていた。しかし、安全靴市場にも変化は起こる。これまで「黒い重い革の靴」が中心だった市場に、デザイン面に優れた「安全スニーカー」と呼ばれる商品が登場。アシックスなどスポーツ靴メーカーが安全靴を販売するようになったのだ。

 のばのばが以前に販売していた安全靴は3000円ほど。そこに数倍以上の価格で、機能性に優れた商品が続々と登場した。これにより「疲れにくい」や「痛くない」といった機能面に注目が集まることになったという。

 こうした状況を踏まえ、のばのばではトレンドに即したアシックスの商品などの販売代理業務に注力。その結果、売り上げは大幅に伸びた。一方で、売り上げの4割ほどをアシックス商品に依存するようになってしまった。また、アシックス商品のヒットにより代理店も増加。代理店間による激しい価格競争が始まった。加えて、商品やチャネルが限定的になってしまうという課題も生じた。

同社の保有する「うんこパトカー」。公道も走れるという

 作業用品を扱う競合を見渡すと、作業用品だけでなく、厨房用資材や不動産業にまで手を伸ばしている企業もある。また、作業用品を扱う店の大規模化が進む中、ホームセンターチェーンに卸すことも検討したが、配送にかかるコストや、販売手数料の面から断念した。このように、新たなジャンルに挑戦する必要性にのばのばは迫られていた。

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