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クラウド型タスク管理ツール「Jooto」開発者が語る 「それでも対面コミュニケーションが重要」な理由

» 2019年10月25日 14時30分 公開
[らいらITmedia]

 18万人が利用するクラウド型のタスク・プロジェクト管理ツール「Jooto」(ジョートー)。この手のツールはSlackやTrelloなど海外製のものがよく知られていますが、Jootoはその活用法を伝える無料セミナーを定期的に開催するなど、日本企業らしいキメ細やかなサポートもあり、導入企業は増えつつあります。今回その開発者に、クラウド型のタスク管理ツールを導入する意義や、ツールを活用してプロジェクト達成を導くためのヒントを聞きました。

グローバル企業での経験がきっかけ

―― Jootoはどうやって始まったのでしょうか?

 もともと私とフランス人の相方2人で、2014年にシンガポールで立ち上げた事業です。私は当時シンガポールに住んでおり、いろいろな会社を渡り歩きました。シンガポールはいろいろな国の方がいて、言語も違えば文化も違います。そんなダイバーシティーの環境のなか、同じチームで働くときにコミュニケーションを円滑に進められるまとまったツールがあればと思いJootoを作りました。

Jootoの生みの親の一人であるPR TIMES Jooto事業部長の原悠介氏

―― シンガポールでの経験がきっかけだったのですね。具体的にはどんな仕事環境だったのでしょうか。

 例えば、中国の方とか、インドの方とか、それぞれがそれぞれの国のチャットツールで作業をしていたんですね。会社はグローバルで自由な雰囲気でしたが、私たちマネジャー層からすると、依頼した作業が今どうなっているのか、進捗度合いが分からない状態です。その問題をなんとかしたかったので、Jootoを使ってタスクベースで入ってもらい、会話をしてもらう状態を作っていきました。

 最初は社内で試しに作ったものですが、それがうまく回ったので、当時のビジネスの顧客に使っていただいたところご好評いただけたので、そこからサービスを展開させていきました。

―― その後2017年にPR TIMESに事業譲渡し、現在は日本で展開が進んでいますが、顧客はどういった企業が多いのでしょうか?

 メインは中小企業の方たちが多いです。もちろん大企業でも使っていただいていますが、その場合は企業全体というより、チームや部門、部署など、数人から数十人単位でプロジェクトを進行する際に使っていただいているイメージです。

メンバーのタスク管理画面

―― 業種に偏りはありますか? こういったWebでのタスク管理ツールは、IT企業での導入が多い印象はありますが……。

 それが本当に多岐にわたるんですよね。弁護士などの士業、Web制作会社やデザイン会社もありますし、ECサイト運営や製造系、建築系まで、業種は問いません。それがJootoの強みであると思います。

―― 導入企業の中でも、今までタスク管理はおそらく個々の会社でやられていたはずです。そこからJootoに変えるメリットをどのように訴求したのでしょうか。

 まだExcelやメモ、付箋などでタスク管理をしている企業は多く、当社で開催しているJootoのセミナーに来られる方々もそういう方がほとんどです。そのため、「Jootoでタスクを可視化し、チームみんなが同じ情報を見てプロジェクトを遂行できるようにする」というのが私たちの提案になります。

営業進捗管理画面
人事採用の進捗管理画面

プロジェクト評価のためのタスク管理

―― 意外とPCやスマホで仕事するようになった今でも、タスク管理はアナログというケースは多いのですね。顧客からよく聞くチームプロジェクトの悩みは、代表的にはどういうものがありますか?

 「誰が何をやっているのか分からないので進捗度合いが見えない」「タスクの抜け漏れがある」などです。このあたりはどんな業種、部署、役割であろうと変わらないなと感じています。また、よく成長中の企業の方にも来ていただきますが、これから人が増えていくにつれ増えるプロジェクトの管理をなんとかしたいという声も多いです。

―― 確かに挙げていただいた問題は私もよく直面します。みんな同じなんだと少し安心しました。では、その問題はどのようにしたら解決できるのでしょうか。

 最も大事なのは入口である「プロジェクトの目的」です。目的と目標はすごく重要で、その上で何を管理すべきかを明確にしなければ、プロジェクトが遅れたり、頓挫したりすることが往々にして起きてしまいます。プロジェクト管理の基本は、運用ルールをしっかり決め、目標に対して道を作ること。ゴールを明確にし、プロジェクトメンバーとシェアするのが重要です。しかし、そこは同時に重要性を伝えるのがすごく大変な部分でもあります。

―― プロジェクトのトップがそのような高い意識でタスク管理ツールを導入したとしても、メンバーの中にはツールでタスク管理するのが面倒な人もいるはずです。例えば、「頭で覚えているから、わざわざツールを使って管理したくない」「自己流の管理方法がある」というような。そういう人はどう発想を転換すればいいですか?

 Jootoのような管理ツールは、プロジェクトを達成させるためだけでなく、最終的なプロジェクトの評価や、プロジェクト終了後の振り返りをするためのものでもあります。自分にとってメリットがなく、上司の管理のためにやらなければいけないかもしれませんが、タスク管理ツールをきちんと使えていたら、半年後などに自分が今までやってきた成果が振り返られるわけです。評価の振り返りがしやすい点は自分にもメリットがあることで、自分がどれだけ取り組んだか、きちんと知らせる場としても活用できるのではないかと思います。

―― なるほど。自分の評価のために使うという発想はありませんでした。

 また、私たちはタスクの入力漏れを防ぐために、毎週月曜日に30分程度メンバー全員が集まり、今週自分が何をやるのかを発表する「チェックイン」を行っています。また、金曜日には今週達成したもの、できなかったものを簡単に報告する「ウィンセッション」も実施しています。

 これはOKR(※)をもとにしており、タスクの開始と終了をJootoを見ながらそれぞれ発表してもらいます。この会があるので、Jootoにタスクを入れる習慣がつきますし、自然とJootoを常に開いて身近に使ってもらえるようになっています。

※OKR:「Objectives and Key Results」の略。組織が掲げる目標達成のため、成果をリンクさせ、進捗を追う。Google社も採用する目標管理方法の1つ。
Jootoは設定したタスクをガントチャートで確認することもできる

クラウド管理だからこそ対面のコミュニケーションを大切に

―― チェックインやウィンセッションを行うようになって何か変化はありましたか?

 それを行う前は私が「このタスクを入れておいて」とお願いしても入れてくれないメンバーもいましたが、今は自分のタスクの発表があるから入れてくれるようになりました。Jootoを見ながら会話する機会も増えましたね。

―― クラウド管理できるからといって、クラウド上だけで全てを完結させるわけではないのが意外でした。

 マネジャーの考えになりますが、オフラインとオンラインをしっかり掛け合わせるのが、チームビルディングにおいてはすごく重要です。特にオフラインでのコミュニケーションをないがしろにしてしまうと、どのツールを使ってもうまくいかないと思います。30分のWeb会議で構わないので、みんなで集まって、今自分がどのような進行状態なのか、それぞれ発表する時間は大事です。

―― クラウド型のタスク管理というと、どうしてもイメージとして効率性やスタイリッシュさを求めてしまいますが、一方で同時に対面での地道なコミュニケーションも大切にしないといけないのですね。

 泥臭さはありますが、人間同士なので、しっかり会話をする場も絶対必要だなと感じています。

―― 今後、Jootoをどのように発展させていきたいと考えていますか。

 私たちのビジョンは「プロジェクトサクセス」なので、あらゆる部署や業態でJootoを使っていただき、プロジェクトを成功に導いてほしいという思いがあります。そのうえで生産性を上げて日々のいい時間を増やしていただき、生活が豊かになるというのが私たちの唯一のゴールです。その目標だけを今は目指しています。



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