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» 2019年08月09日 08時00分 公開

業務を効率化するITツールの最新事情:話題のSlackを導入するコツは? 基本と活用を解説 (1/3)

ビジネスチャットツールの現在の潮流を作ったのはSlack Technologiesの「Slack」であり、その潜在性はMicrosoftが同社買収を巡ってトップ間で激論があったことからもうかがえる。今回はそのSlackの基本から、活用までの情報をまとめたい。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 前回、代表的なビジネスチャットツールの1つとしてMicrosoftの「Teams」を紹介した。もともと業務でMicrosoft Officeなどの同社製品を活用しているユーザーが多いこともあり、これらのツールとの親和性を強調しつつ、既存のワークフローを損ねることなくスムーズに導入できる点が大きな特徴となっている。

 また、Teamsユーザーの大半は「Office 365のユーザー」である事実からも分かるように、基本的にはOffice 365の有料プランを契約するユーザーであれば、そのまま追加費用なしにTeamsを導入活用できることも近年ユーザー数を伸ばすきっかけになっていると考えられる。

 いずれにせよ、“ビジネスチャット”という概念が近年のビジネス現場におけるIT活用を大きく変えつつあり、広く受け入れられる素地があったからこそTeamsの活用が短期間でここまで進んだのだろう。

 一方で、このビジネスチャットツールの現在の潮流を作ったのはSlack Technologiesの「Slack」であり、その潜在性はMicrosoftが同社買収を巡ってトップ間で激論があったことからもうかがえる。今回はそのSlackの基本から、活用までの情報をまとめたい。

米カリフォルニア州サンフランシスコにある現在のSlack Technologiesのオフィス

「口コミ」と「成功体験の共有」がSlack拡大の原動力

 現在でこそ全世界で1600人以上の従業員を抱え、世界10都市にオフィス拠点(このうち米ニューヨークには2つのオフィスが存在)を持つSlack Technologiesだが、もともとはカナダのソーシャルゲームメーカー、Tiny Speckとして2009年に事業をスタートさせた。

 同社が11年にリリースしたGlitchは、サービス開始からわずか1年で終了となるが、このGlitchの開発にあたって制作された社内コミュニケーションツールが後のSlackとなり、13年のリリース以降爆発的に広まることになる。その翌年には社名を「Slack Technologies」に変更。米カリフォルニア州サンフランシスコと、もとの拠点であるカナダのバンクーバーに2つの本社体制を築いており、現在もなお拡大中だ。

Slackの基本画面。進行中の案件や部署ごとの連絡網がチャンネル単位で管理されている

 少しだけ古いデータだが、同社は19年1月にSlackの全世界の日間アクティブユーザー数が1000万人を突破したことを報告している。多少の波はあるものの、ほぼ比例する形でユーザー数が増えているのがグラフからは分かる。

 Slackの市場拡大は「口コミ」や「成功体験の共有」を通じて、社内でユーザー人口を増やしたり、あるいは感度の高いユーザー中心に周辺他社を巻き込み、少しずつユーザー数を増やしてきたことが成長の背景にある。いわゆる「フリーミアム」(Freemium)と呼ばれる「無料版で入門して、気に入ったユーザーから有料版へと移行していく」というビジネスモデルをそのまま体現している他、「成功体験の共有」という部分の重要性を理解しているSlack自身が「カスタマーサクセス」と呼ばれるチームを編成して顧客へのサポートやコンサルティングに当たるなど、こうした動きを支援する形で成長を後押しする。

 Microsoft Teamsとの大きな違いは営業体制にあり、Microsoftは自身が抱える大量のパートナーネットワークを通じてTeamsソリューションの拡販を行っているのに対し、Slackでは基本的にダイレクトセールスしか行っていない。顧客自らがSlackにアクセスして契約を行うというスタイルだが、それらユーザーが有料プランを契約する過程で前述の「カスタマーサクセス」の部隊が活躍するわけだ。

2019年1月までのSlackの成長の歩み

 ちなみにSlackの日本語版が正式にローンチされたのは意外と最近で、17年11月だ。もともとSlackでは日本語自体を取り扱えており、日本語版提供前から国内で利用しているユーザーは存在した。こうした経緯から、日本語版提供時点で既に日本はアジア太平洋地域で最大のARR(年間経常収益:Annual Recurring Revenue)を誇っており、世界的にみても3位の地位にあった。その後、日本オフィスが正式に設置され、日本市場に即したローカライズを行う形で日本語版がリリースされた。19年7月初頭の取材時点では40人近い従業員が日本オフィスに在籍しており、現在もなお急ピッチで人員が増えているという。

 世界的にみれば、19年6月20日にはついにニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場(IPO)を果たし、今後の成長に向けてさらに舵を切った段階にある。米国の証券取引所では“ティッカーシンボル”と呼ばれる英数字で最大4文字までの略称が各社の銘柄に付与される。興味深いのは、Slack Technologiesが「WORK」というシンボルを選んだことだ。昨今働き方改革などといわれることが増えているが(英語でいうWorkstyle Innovation)、そうした象徴的なキーワードを選択した点は目を引く。

6月20日のIPO当日にニューヨーク証券取引所(NYSE)の正面に掲げられたSlack上場を祝うバナー
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