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話題のSlackを導入するコツは? 基本と活用を解説業務を効率化するITツールの最新事情(2/3 ページ)

» 2019年08月09日 08時00分 公開

Slackを活用する企業たち

 前項でも触れたように、Slackの基本は無料プラン(フリー)でチーム内、あるいはプロジェクト内で小規模な導入からスタートし、ユーザーの認知が進んでより多くの機能を制限なしに利用したいと考えたとき、有料版へと順次移行するスタイルが中心となる。

 料金プランのページを参照してもらうと分かるが、無料版にあったような検索やアプリ利用の制限を取り払った「スタンダード」、それに加えて各種ダウンタイムサポートや管理機能を付与した「プラス」、組織を横断して複数のワークスペースを連携させ、一括管理を可能にする「Enterprise Grid」の3つの有料プランが存在する。

 導入のコツは、いきなり大規模に展開するのではなく、まずは比較的限られたチーム内での活用を進めることだ。Slackの特徴は「周囲に使っているユーザーが多いので参考になる情報が散らばっている」「社内研修や教育で少しずつ利用範囲を拡大する」といった形で情報やノウハウを拡散させやすい点にあり、このあたりは同じくフリーミアムモデルを採用している開発者向けコラボレーションツールの「GitHub」などに通じるものがある。

 Slack自身も「Slackを徹底的に使いこなす!」の名称で導入・拡大ノウハウをブログ上で紹介していたり、「成功体験の共有」という側面から、国内外でのSlack活用事例をピックアップして紹介している。自身が啓蒙活動を通じて社内に地道に“味方”を増やしていくのも手だが、こうした事例の数々は強力な説得材料になる。適時参考になるものを社内で共有していきたいところだ。

 Slackは「チーム内での連絡帳」「テキストだけでなく画像などのファイルも含めた情報共有」「相談や簡単な会議」といった普段使いのツールから、特定プロジェクトやキャンペーンに合わせて新しいチャンネルを確保してメンバーを招集したりと、さまざまな応用が可能だ。

 業種や活用される部署もさまざまで、利用者の数だけ事例が存在し得るといっていい。比較的大規模な事例として紹介されているのは武蔵精密工業のもので、ここでは組織を小さくしてチーム制へと改編しつつ、経営方針や情報を末端まで共有していこうという形でSlack導入がスタートした。

 世界的な部品メーカーとして創業80年近い歴史を誇る同社だが、もともとは大塚製作所としてスタートしたファミリービジネスの会社。現在では1万6000人の従業員を抱える大企業に成長した一方で、組織がピラミッド化して風通しは悪くなってしまった。06年に社長に就任した創業者の孫にあたる大塚浩史氏の号令の下、組織のシンプル化に合わせてSlackを導入し、意思伝達や情報共有スピードを向上させたという。

武蔵精密工業のWebサイト

 同じ老舗企業でもカクイチの事例はさらに面白い。こちらは創業130年という歴史を誇り、グループ全体の従業員数は600人で全国に多くの拠点が存在する。取扱商品は多岐にわたり、主にはガレージや倉庫、各種備品や農機具まで、主要な顧客は農業関連の従事者だという。ただし、その業務はITツールとは縁遠い世界で、各事務所にはPCやFAX、電話があり、それらで受発注や在庫管理業務を行うという非常にレトロなスタイルだ。

 社長の田中離有氏は5年前に同職に就任したばかりで、それに合わせていろいろ業務改革を進めるなかでSlackを導入し、情報共有スピードを向上させた。その一方で、もともとビジネスチャットツールなどとは縁遠い世界でビジネスを繰り広げてきた経緯もあり、まずはグループ内での社員教育からスタート。入社したばかりの女性社員の1人がアンバサダーに就任する形で全国でセミナーを開催し、ツールの活用方法からそのメリットまでを伝えることに努めた。結果、社員末端までの情報共有や顧客対応が非常にスムーズになり、単に情報を伝達するだけという意味での中間管理職の存在意義が問われるような状況になりつつあるようだ。

カクイチのWebサイト

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